国民投票法改正 平和憲法の効用学びたい


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 国民の目の届かないところで改憲への地ならしだけが独走する。そんな事態に危惧の念を覚える。

 与野党7党は憲法改正の手続きを定める国民投票法の改正案をまとめ、衆院に提出した。7党の合意により今国会での成立は確実とされる。だが調整は国会の外でなされたものだ。国民の眼前での論議もない段階で、はや成立確実と聞くと、違和感を禁じ得ない。慎重な審議と国民的論議の喚起を求めたい。
 国民投票法は2007年、第1次安倍内閣のときに成立した。その際、投票年齢など3点について3年後の法施行までに「必要な法制上の措置を講じる」と付則で定めていたが、実現しておらず、「三つの宿題」と呼ばれていた。
 このうち二つの「宿題」で与野党が合意に達した。それが今回の改正案だ。まず投票年齢を改正法施行後4年間は20歳以上とし、それ以降は自動的に18歳以上とする。二点目に、改憲の賛否を働き掛ける「勧誘運動」を、公務員にも解禁した。いずれも民主党の求めに与党側が譲歩した格好だ。
 背景には議会構成の事情がある。自民・公明の議席数は衆院で3分の2を超えるが、参院では、みんなの党や日本維新の会を加えても3分の2に届かない。国民投票法改正は過半数の賛成でも可能だが、その先の憲法改正を見据え、民主も改正論議に引き込みたいという狙いがあった。
 だが、そうした数合わせでこのような重要な制度改正を考えてよいのか。投票年齢は、他の選挙での投票年齢や飲酒・喫煙などの成人年齢との擦り合わせが不可欠だ。国民の幅広い理解がないと円滑に進まないはずである。国民的論議が求められるゆえんだ。
 公務員の勧誘運動も、例えば改憲に賛成の首長が公務員を使って住民に改憲賛成の投票を促すこともあり得る。公務員の地位利用を禁止する十分な手だてが必要だ。
 「宿題」の三つ目は、国民投票の対象を憲法改正以外にも広げることだったが、手つかずだ。投票を有効とする基準を定める最低投票率の設定も検討すべきであろう。
 そもそも改憲の手続き改正を急ぐ必要があるのか。日本は、第2次大戦以降一度も戦争をしていない貴重な国の一つだ。平和憲法のおかげである。その資産を拙速に手放してよいはずがない。むしろ現行憲法の効用を議論すべきだ。