無償措置法改正 「教育の中立性」ゆがめるな


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 改正教科書無償措置法が国会で成立した。

 採択地区協議会の設置を明記し、協議会で決めた同一の教科書を採択することを義務付けた。石垣市、与那国町と異なる教科書を使う竹富町を標的にしたかのような内容で、教育の民主化と地方分権に逆行している。
 法改正によって採択地区協議会の性格は、従来の答申機関から採択機関へと変化した。与えられた権限を使って協議会の結論に反対する他の市町村に押し付けることができる。市町村教委の教科書採択権にも縛りをかける重大な変更だ。
 採択地区協議会の組織・運営は今後政令で規定されることになる。政令は国会審議を経ないので省庁の意向に影響されやすい。政治的中立を求められる教育に、国の恣意(しい)的な介入が一層鮮明になる可能性をはらんでいる。公開制、民主的手続きが担保されているかどうか注視する必要がある。
 一方、改正法は採択地区の設定単位を「市郡」から「市町村」に変更した。竹富町教育委員会の慶田盛安三教育長は「地域の特性に合わせた学習ができる。小規模化するのが学校にとってもいい」と一定評価している。
 法改正によって竹富町は八重山地区の協議会から離脱して単独で教科書を採択することが可能になる。同町と採択地区の設定権を持つ県教育委員会も分離の検討に入った。
 しかし下村博文文部科学相は「小さな町村では、十分な調査研究ができない」と分離に否定的な見解を示している。何が何でも保守色の強い育鵬社版を竹富町に押し付けたいようだ。
 全国には1町村で採択地区を設定している自治体が14町村ある。このうち竹富町より教員数が少ない自治体は小学校8町村、中学校10町村に上る。文科省も竹富町の分離は「理論的に不可能とは言えない」と判断しており、下村発言は根拠がない。自治体の判断を尊重すべきだ。
 保守色を強める安倍政権の登場によって、国に従わない竹富町に「より強い指導を行うようになった」と文科省幹部が発言している。「恫喝(どうかつ)」を伴って「教育の中立性」をゆがめる政治介入は許されない。
 竹富町はこれからも国の「恫喝」に屈せず、県教委と共に子どもたちにとって最良の選択をしてほしい。