「5年以内」否定 茶番劇の続行は無意味だ


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 仲井真弘多知事の言動の欺瞞(ぎまん)性がまた一つ、あぶり出された。

 在日米海兵隊トップのウィスラー中将(在沖米四軍調整官)が米ワシントンでの講演で、米軍普天間飛行場の5年以内運用停止の可能性について「質問を正確に捉えれば、答えはノーだ」と述べた。
 「5年以内運用停止」について米側が明確に全面否定したのは初めてだ。米側に応じるつもりがないことははっきりした。そもそも日本政府にこれを要求する意思はない。茶番劇、偽装はもうやめるべきだ。
 知事は昨年末の辺野古移設埋め立て承認の際、条件に掲げていた「5年内運用停止」について、「首相が言ったことそのものが担保だ」と述べ、政府が保証したとの認識を強調した。
 だが安倍晋三首相は「努力を十二分に行う。できることは全てやる」と述べたにすぎない。「努力したができなかった」という「逃げ道」を用意した言い方だ。
 そうした政治家の「文法」を、通産省の役人だった知事が知らないはずがない。それでいて首相が本気で取り組むと信じているように装うのは、不誠実極まりない。
 日本政府に取り組む意思がない証拠は山ほどある。岸田文雄外相は2月の訪米でケリー国務長官、ヘーゲル国防長官らと会談したが、「5年以内運用停止」は言及さえしていない。ヘーゲル氏が5日に来日した際も、安倍首相や小野寺五典防衛相は「5年内-」が沖縄側の要望だと述べたが、単なる「伝言」にすぎない。具体的な議論どころか、自らの意思として要求すらしなかった。
 その意思のなさはまた、既に繰り返された光景である。1999年に稲嶺恵一知事(当時)が辺野古移設を受け入れた際、知事が求めた「15年使用期限」について、政府は「米政府との話し合いの中で取り上げる」と閣議決定したが、まるで交渉しなかった。今回はその閣議決定すらないのだ。取り組むはずがない。
 そもそも知事の埋め立て承認は、誰が見ても基地に対する「イエス」だ。移設埋め立てを承認しておいて「運用停止」を口にしても、米国が本気の要求だと思うはずがない。誰も信じていない茶番劇をこれ以上演じても無意味だ。
 普天間の返還合意から12日で満18年だ。いつまで茶番を続けるのか。本当に沖縄の負担を軽減するなら県内移設の呪縛を解くべきだ。