鳥インフルエンザ 感染原因の究明を急げ


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 熊本県は、県内の養鶏場で鶏が大量死し、その一部から遺伝子検査で高病原性鳥インフルエンザウイルスH5型が検出されたと発表した。これを受けて同じ経営者が経営する養鶏場2カ所で、11万羽余の殺処分を集中的に行った。

 養鶏場から半径3キロ以内の計4万3千羽の鶏と卵の移動を制限し、半径3~10キロの計約39万8千羽と卵は外部への搬出を制限した。消毒剤散布を含め、こうした迅速な対応は当然だろう。
 政府の説明によれば、農場からの報告が比較的早く、二次的感染は今のところあまり心配なさそうだ。だが感染の原因や経路が分かるまで油断は禁物だ。国や自治体など関係機関は緊密に連携し、原因究明や防疫措置を徹底すべきだ。
 農水省有識者会合の小委員長で、家きんの疾病に詳しい伊藤寿啓・鳥取大教授は、ウイルスが韓国から野鳥などを通じて持ち込まれた可能性を指摘し、「渡り鳥が日本から大陸に戻る5月中旬くらいまで警戒が必要だ」と指摘した。
 そうなると、全国有数の渡り鳥の飛来地・沖縄も人ごとではない。養鶏場への防鳥ネット設置や、他の生き物が進入できないように隙間をふさぐ隔離策などが重要だ。もちろん農場や鶏に異変を感じたら即通報するなど、危機管理で必要なことは直ちに実践すべきだ。
 近年、鳥インフルエンザは世界各地で流行し、いつどこで新たに発生するか分からない。今シーズンも韓国で猛威を振るい、これまでに約1200万羽の鶏が殺処分されたという。日本国内では2010年から11年春にかけて大流行した。
 世界保健機関(WHO)は、鳥インフルエンザに感染した人や豚の体内でウイルスの遺伝子が変化し、新型インフルエンザが発生することを警戒している。引き続き警戒が必要だ。大生産地に感染が広がれば鶏肉や卵の供給に影響し、小売価格の上昇なども懸念される。
 消費増税で負担感が増す家計や国民の健康への悪影響を阻止するためにも、全国の自治体が感染の拡大防止に万全を期してほしい。
 一方、消費者庁はホームページ上で「鳥インフルエンザに感染した鶏肉や卵を食べても、人に感染することはない」とする専門家の見解を紹介する。不確実な情報に惑わされ、パニックを起こしたり、風評被害を広げたりするような過剰反応も厳に慎みたい。