防衛局申請 非民主的計画をやめよ


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 移設に反対する民意を無視し、既成事実化を図ろうとする粗野な行為に憤りを禁じ得ない。

 沖縄防衛局が米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事に向け、資材置き場に使うための漁港使用許可など6項目について、名護市の稲嶺進市長に申請した。
 市によると、防衛局は11日夕、申請書類を役所に届けたが、事前の連絡もなく、突然提出された。稲嶺市長は「やり方にルールや礼儀などが感じられない。事前に調整もなく、相変わらず強引だ」と批判した。
 市長が「相変わらず」と指摘するのはもちろん、地元の意向がことごとく無視されているからだ。防衛局が1月に移設作業に関する受注業者を募る入札を公告したのは、移設反対を掲げて稲嶺氏が再選された2日後だった。普天間の辺野古移設という事業は民主主義国家を標榜(ひょうぼう)するこの国において、政府が地元自治体の合意を全く得ずに進めている異常な手続きであることを再確認しておきたい。
 市は昨年11月、埋め立てについて「断固反対することが市民の強い決意」とする市長意見をまとめ、「生活環境、自然環境の保全を図ることは不可能」と強調した。
 だが埋め立てをめぐる数々の疑問点にこれまで防衛局はまともに答えていない。一例を挙げれば県外から大量に調達する埋め立て用土砂への外来生物の混入懸念だ。市は「防ぐことはほぼ不可能」と指摘したが、防衛局は外来種の駆除について「技術的に可能だと考える具体的な根拠を提示することは困難」といった説明にとどまる。無責任と言われても仕方がない。
 今回の申請は23日に予定されるオバマ米大統領の来日を前に移設作業の進展を演出する狙いがあるのではないか。環太平洋連携協定(TPP)交渉など、他のテーマでは進展が難しいからせめて普天間で-というのであれば、これほど沖縄をばかにした話はない。
 普天間問題で政府は5年以内の運用停止などの県要望に「全力で取り組む」と繰り返すが、米側に「沖縄が求めている」と伝達するだけで、米軍司令官は実現可能性を明確に否定した。県民はもうだまされまい。
 非民主的な手続きをこれ以上進めることは許されない。安倍晋三首相が首脳会談で伝えるべきことは移設に反対する沖縄の世論だ。移設計画の見直しについて、大統領と胸襟を開いて話し合うべきだ。