IPCC報告書 原発との決別は不可避だ


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 地球環境が発し続ける警鐘にどう対処するのか。待ったなしの温暖化対策で、人類の英知が試されている。国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、温室効果ガスの削減策を検討する第3作業部会の7年ぶりとなる新報告書を公表した。

 地球温暖化にブレーキをかける国際目標の達成には、2050年の温室効果ガス排出量を10年比で40~70%と大幅に削減し、今世紀末には排出をほぼゼロかそれ以下にする必要があるとする内容だ。
 化石燃料に多くを頼る現在のエネルギー戦略について、根底から変革するよう強く迫ったものだ。国際社会はこの警告に正面から向き合う必要がある。
 新報告書は地球温暖化は悪化の一途をたどっており、現状のままでは今世紀末の平均気温は3・7度~4・8度上昇すると予測した。
 3月末に公表された第2作業部会の報告書は、温暖化が初めて人類の安全保障にも影響を及ぼすと警告している。温暖化をこれ以上放置すれば、熱波や洪水の多発、島の消滅、海水温上昇による生態系への悪影響など、人類が危機に陥るのは明らかだ。今を生きるわれわれには、未来への責任ある行動が強く求められている。
 新報告書は、エネルギー供給部門について、種類別に利点や問題点を評価した。原発は「成熟した低排出のベースロード電源だが、さまざまな課題やリスクがある」と指摘した。IPCC内でも原発の推進派と反対派があり、意見の対立があったとされる。
 原発は、1993年以降、世界の発電量に占める比率が低下しており、国際エネルギー機関(IEA)によると、現状は10%強を賄う程度という。指摘される問題は、安全性や過酷事故のリスク、上昇の一途をたどる建設コスト、放射性廃棄物の処理、市民の反対などだ。温暖化対策を原発に頼るのは、大きな火種を新たに抱えるようなもので、到底現実的ではない。
 一方、新報告書が指摘するように、再生可能エネルギーは、大幅に発電効率が上がる一方でコストは低下している。その発電量に占める比率を高めることが、むしろ現実的だ。併せて、火力発電所で発生する二酸化炭素を地中に閉じ込めるCCS技術など、新たな技術革新にこそ注力すべきだろう。温暖化対策においても、原発との決別を急ぐべきだ。