大地震の病院倒壊 耐震化など防災対策確立を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 中部保健所が管内で病床を持つ病院と透析を行う診療所にアンケートを実施したところ、震度6規模の地震が発生した場合、施設の倒壊などで使用できる病床数が平常時の約7割になると見ていることが分かった。災害時は負傷者が発生し、平常時よりも病床数が必要になる。耐震化など防災対策を確立・強化すべきだ。

 調査には40医療機関のうち38機関が回答。15機関が「倒壊の可能性がない」と答えたが、7機関は「倒壊の可能性がある」と答えている。
 もし、7機関が倒壊すれば、合計1536病床が使用不能となり、平常時の5801病床から約26%減の4265病床しか使用できなくなる見込みだ。しかし「使用できる病床」の中には倒壊するかは「不明」と回答した16機関も含まれる。耐震診断を実施していない機関もあり、倒壊する医療機関はさらに増える可能性がある。
 災害時マニュアルを策定しているのは25機関だが、そのうち医療機関の被災を想定し、最低限の診療体制を維持するための業務継続計画(BCP)を策定しているのは6件にとどまった。医療機関の災害対策は不十分であり、強化する必要がある。
 県全体の状況は、厚生労働省が2012年時点の病床20床以上の病院耐震改修状況調査によると、県内94病院のうち全ての建物に耐震性がある病院数は63、耐震化率は67・0%で全国61・4%を上回る。災害拠点病院と救命救急センターは県内7施設のうち全ての建物に耐震性があるのは4施設、耐震化率は57・1%で、全国73・0%を下回った。
 昨年11月、改正耐震改修促進法が施行された。1981年以前に建てられた病院、ホテル、旅館など人の出入りの多い大型施設に耐震診断を義務付け、耐震改修に必要な費用の支援を拡大した。国と自治体がそれぞれ5分の2まで補助できる。
 14年度の当初予算で改修補助費用を盛り込んだ都道府県は15府県で、沖縄県は予算措置をしていない。診断を済ませた上で補助する都道府県もあるようだが、早期改修を促すのが筋ではないか。
 病院は人の命を預かる施設だ。大規模災害が起きてからでは遅い。5月に中部の4病院が締結する相互応援協定のような支援体制を全県にも拡大する必要がある。