韓国船沈没 救助に全力尽くせ


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 何と痛ましい事態だろう。韓国南西部の珍島付近で、済州島へ修学旅行に向かう高校生ら475人を乗せた旅客船が沈没した。楽しい旅が暗転、事故直後の対応の悪さが重なって韓国で過去最悪の船舶事故となる恐れがある。

 救出は一刻を争う。しかし作業は難航している。韓国当局は一人でも多く生存者を発見するよう最善を尽くしてもらいたい。日本も積極的に支援すべきだ。同時に徹底的に原因を究明し、責任の所在を明らかにしなければならないだろう。
 沈没した旅客船は国が勧告する安全運航航路からそれていた。濃霧による出港遅れを挽回するために危険水域に入ったのではないか、という見方がある。事故現場は済州島に向かう船舶が針路を変える地点だ。船首の向きを急激に変えたため荷物が一方に片寄り、バランスを崩して傾いた可能性があると海洋警察は推定している。
 韓国メディアによると、事故発生当時、操舵(そうだ)室にいたのは経歴1年程度の3等航海士だった。事故発生海域は潮の流れが速いことで有名だ。経験不足の航海士に任せた船長の判断にも疑問が募る。
 さらに事故直後の旅客船の対応のまずさが一層深刻な事態を招いている。船内に閉じ込められた生徒たちを置き去りにして船長が真っ先に脱出した。無責任さに非難が集中している。
 事故当時、船内待機を指示する放送が流れていたという。浸水しているにもかかわらず、船員が状況を把握せず誤った指示を出したため、生徒たちが逃げ遅れたのではないか。直ちに救命ボートを下ろして乗客を海上に脱出させる初歩的措置を取っていなかった可能性が高い。船舶会社の危機管理の在り方にも問題はないか。航路の選択と事故の関係、避難誘導の不備など徹底的に究明しなければならない。
 朴槿恵(パククネ)大統領は、修学旅行のような集団研修に対する安全点検を指示していた。指示が徹底されなかったつけはあまりにも大きい。
 離島県沖縄にとって船舶は生活の足として身近な存在だ。沈没した旅客船「セウォル号」は、2012年まで沖縄と鹿児島を結ぶ国内定期船「フェリーなみのうえ」として航行していた。かつて県民の足として活躍した船舶に閉じ込められた人々を、一人でも多く生還させるよう全力を尽くしたい。