グアム移転遅延 負担軽減の虚構が浮かぶ


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 これはいかさまの証明ではないのか。沖縄の基地負担軽減の屋台骨ともいえる在沖海兵隊のグアム移転に関する環境影響評価(アセスメント)の補足説明書で、移転に必要な期間が「5年以上」から「12年以上」に変更されていた。

 一方、日米両政府が2013年に発表した嘉手納基地より南の基地返還計画のうち、牧港補給地区の海側について「24年度またはその後」に、海兵隊が国外移転した後に返還すると記されている。
 仲井真弘多知事は、米軍普天間飛行場の代替新基地を造るための辺野古沖埋め立て申請を承認した際、牧港補給地区の7年以内の全面返還を要求していたが、米側の眼中にはないようだ。
 海兵隊のグアム移転計画の事業積算のずさんさを指摘し、米議会が予算の大部分の執行を凍結する中、国内事情で移転を遅らせる米政府側の独善的な姿勢が際立ってきた。グアム移転を前提にした、在沖基地の返還も大きく遅れる可能性が高まっている。
 基地負担軽減の実効性は、基地返還や兵力削減とともに、そのスピードが大きな要素となる。早ければ早いほどいいのだ。
 グアム移転の大幅遅延は、在沖米軍基地の負担軽減そのものが虚構ではないのかという強い疑念を抱かせる。われわれは、この異常事態を断じて容認できない。
 米国防総省は、グアム移転のアセス補足説明書で、2010年版で「5年以上」だった記述を14年版で「12年以上」に変更した。負担軽減の柱であるはずのグアム移転期間を7年も膨らませること自体、本気度が弱い証左だろう。
 そもそも、海兵隊のグアム移転は後退を繰り返してきた。
 06年の日米合意の人数は「隊員8600人と家族9千人」だったが、12年に「隊員5千人と家族1300人」に縮小された。だが、移転に要する期間は2倍超に延びる。不可解極まりない。
 日本政府は、海兵隊のグアム移転に巨費を投じるが、基地返還遅れに結び付く米側の計画変更を知らされていたのか。そうであるなら、何らかの対応を取ったのか。
 唯々諾々と米側に従うばかりの米軍再編交渉のつけが、独り善がりな米側の対応を招く一因だろう。
 日本政府は、米側の移転期間の大幅延長に対して抗議し、撤回させるべきだ。