「有機」不正表示 消費者の信頼裏切る行為だ


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 食の安全・安心を求める消費者の信頼を裏切る行為だ。

 日本農林規格(JAS)法で定められた有機食品ではないのに、「有機」と表示し、2011年11月~13年11月に農林水産省が同法違反で指導した事例が182件に上った。共同通信による農水省への情報公開請求で分かったものだ。
 過去にも有機JASマークについては不正表示が相次ぎ、改善命令や認定取り消しのほか、逮捕者が出た事例もある。認定する側の誤りも見つかるなど、農家や製造業者などの規則順守の在り方が問われてきた。
 有機JASは、国が登録した第三者機関が農家などの申請を受け、JAS法が定める有機の生産基準を満たしているかを審査し、認定されると「有機」「オーガニック」などと表示できる制度。不正表示には1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科せられる。
 今回の違反事例は認証を受けていない農作物を「有機」などと表示したり、福島県産を他県産としたりしていた。表示違反はコメが46件で最も多く、野菜類やコーヒーでもあった。残念ながら県内業者も5件違反が確認されている。
 農作物が有機JASに認定されるためには堆肥などで土作りをし、種まきや植え付けの2年以上前から化学肥料や農薬を避けて厳しく管理する必要があるという。
 有機JASは、手間暇かけて育て、高いニーズに応えるからこそ価格も高めにできる。偽りの表示で不当な利益を得るのは消費者への裏切りであり、当然許されない。
 食品表示をめぐっては原料や産地の偽装など問題が後を絶たず、由々しき事態だ。過去の事例が示すように、消費者軽視のツケは不正企業だけにとどまらず、業界全体に深刻な打撃となる。今回の指導対象となった事業者は猛省し、法令順守を徹底してもらいたい。
 今回の指導事例は情報公開により発覚したが、農水省は「認識不足や過失による違反で、悪質性は高いと言えず、公表の基準に達していない」として業者名など詳細を公表していない。表示の不正が後を絶たず、食の安全に関する消費者の関心はますます高まっている中、農水省の判断は甚だ疑問だ。
 農水省など関係機関は不正防止のための効果的な取り組みを急ぐことと併せ、関連情報を今後積極的に開示すべきだ。消費者のニーズにきめ細かに応えてもらいたい。