米大統領オバマ様 辺野古断念で決断を 民主主義を死滅させるな


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 ようこそ、米国大統領バラク・オバマ様。あなたの日本訪問を歓迎し、注目もしております。

 安倍晋三首相と会談し、日米同盟の深化や環太平洋連携協定(TPP)に関する共同文書を発表する予定だと聞いています。
 しかし、優先すべきは米軍普天間飛行場の閉鎖・撤去ではないでしょうか。今この瞬間にも、普天間飛行場周辺の市街地では住民が米軍機事故の危険性や騒音にさらされています。
 私たちは普天間の無条件返還で沖縄問題を劇的に改善し、併せて国民が信頼する持続可能な日米関係の再生も急ぐべきだと考えます。

尊厳と郷土愛

 今年1月、言語学者ノーム・チョムスキー氏ら欧米、豪州などの知識人が辺野古の新基地建設は「沖縄の軍事植民地状態を深化・拡大する取り決め」だと批判し、普天間の無条件返還を訴えました。声明は「沖縄の人々は米国独立宣言が糾弾する『権力の乱用や強奪』に苦しめられ続けている」と指摘し、県民の「平和と尊厳、人権と環境保護のための非暴力の闘い」を支持しました。心強く思います。
 米国の建国理念を熟知するあなたは、独立宣言などに基づき辺野古移設に反対した識者声明の重みを銘記すべきです。
 昨年末に仲井真弘多知事が辺野古移設容認に転じましたが、大半の県民は党派を超えて普天間の閉鎖・撤去を求めています。結束の根底にあるのは特定のイデオロギーではなく、自由と民主主義、基本的人権の尊重という普遍的価値観であり、これ以上、沖縄の尊厳を、貴重な沖縄の自然を傷つけさせまいという、郷土愛にほかなりません。
 大統領、あなたは沖縄の民主主義を軽んじていませんか。
 日米両政府が県内移設条件付きの普天間飛行場の全面返還に合意して18年がたちましたが、全県的な世論調査で辺野古移設賛成が県民の過半数を占めたことはありません。昨年1月には県議会や県内41市町村の全首長、議長ら県民代表が普天間の閉鎖・撤去と県内移設断念を求め、事故の絶えない米海兵隊輸送機オスプレイの県内配備中止を安倍首相に要望しました。
 米国内の州で全自治体の首長が基地移設に反対したら、あなたは強行できないでしょう。

人権侵害の移転

 普天間飛行場は沖縄戦のさなか、米軍が本土攻撃に備えて住民の土地を同意なしに占拠したものです。このため普天間飛行場の存在自体が、戦時の財産奪取を禁ずるハーグ陸戦条約(戦時国際法)への違反の疑念を拭えません。普天間飛行場は航空法上安全確保のために義務付けられているクリアゾーンが設定されていません。これは重大な人権問題だと自覚すべきです。
 危険な状況に、オスプレイ配備や騒音被害が拍車を掛けています。県民の目には、普天間固定化は人権侵害の固定化と、辺野古移設は人権侵害の移転と映るのです。
 1966年の国際人権規約第1条は「すべての人民は自決の権利を有する」と記しています。県民にも沖縄に関わる重要決定を自ら決める自己決定権があると理解できます。
 沖縄道州制懇話会(事務局・沖縄経済同友会)が2009年にまとめた沖縄を「特例型単独州」とする提言でも、「主権を有する住民は、主権を住民のために代行する新たな政府を作り出す自己決定権を有し、その権利に基づいて地方政府を設置することができる」とうたっています。悲惨な沖縄戦や戦後の過酷な米軍統治も踏まえつつ、自己決定権の回復を望む県民世論が高まっているのです。
 大統領、あなたは辺野古移設で沖縄の尊厳を毀損(きそん)し、日米の民主主義を死滅させるような過ちを犯してはなりません。

Go to English→Mr. President: Do not smother democracy in Okinawa!