元米兵告発認定 基地汚染の実態把握急げ


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 在韓米軍基地で1978年、枯れ葉剤の入ったドラム缶を埋めた結果、健康被害を受けたと訴えた元米兵に対し、米退役軍人省が被害を認定した。ドラム缶の物質については「枯れ葉剤ではない」と言いつつ、「有毒な化学物質への接触」を理由に認定したという。

 苦しい弁明で火消しを図りながら、ようやくまともな人道的対応を始めたという印象だ。
 同様に米政府が枯れ葉剤説を否定し続けている沖縄での発掘例、元軍人軍属の証言例も該当するはずだ。退役軍人らは本人が前立腺がんなどになっただけでなく、子の代も手足の変形や免疫不全などを発症している。証言のあった県内基地すべてで調査が急務だ。証言や基地使用履歴など情報収集を徹底し、可能性のある地点の発掘を急ぐべきだ。
 米軍はこれに対し、協力というより、自ら主体的に徹底調査する義務がある。でなければ、自国の元軍人には被害を補償しつつ沖縄の住民の健康被害には目をつぶると言うに等しい。人種差別のそしりも免れない、と自覚すべきだ。
 日本政府も、人ごとのような対応は許されない。
 今回、認定を受けた元米兵スティーブ・ハウス氏は、韓国の米陸軍基地キャンプ・キャロルに枯れ葉剤を埋めたと2011年に告発した。韓国政府はすぐに動き、韓米の合同調査委員会を設置。埋めた場所は特定できなかったが、地下水系でダイオキシン汚染を発見した。
 同年、沖縄の基地でも同様の証言が出たが、日本政府は「米軍に照会したが、資料は確認できなかった」と人ごとのような発言に終始した。合同調査を持ち掛けすらしていない。沖縄に基地負担を強制する張本人でありながらである。「外交努力の欠如」などではない。沖縄住民の健康被害など意に介さぬ、「見殺し」の態度に等しい。
 県内で見つかったドラム缶からは猛毒のダイオキシン類の一種「2・4・5-T」が検出されている。枯れ葉剤の主要成分だが、米国は「沖縄で枯れ葉剤を貯蔵・使用した証拠はない」と強弁し続け、日本政府もこれを容認してきた。
 「枯れ葉剤」か否かだけに焦点を当てるが、そもそも健康被害を招くかどうかが問題の本質である。矮小(わいしょう)化は許されない。汚染除去は膨大な時間がかかる。今後、基地返還が予定される以上、汚染の実態把握にすぐ取り掛かるべきだ。