沖縄市長に桑江氏 閉塞感打破へ強い指導力を


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 泡瀬沖合埋め立て事業や停滞する経済の活性化、基地問題などが争点となった沖縄市長選挙は、市政刷新を訴えた新人で前県議の桑江朝千夫氏が、同じく新人で前副市長の島袋芳敬氏との一騎討ちを制し、初当選を果たした。

 失業率が県下5位の14・5%を記録し、空き店舗率が高い経済状況について、桑江氏は2期続いた東門市政の下での「革新不況」と批判した。市政刷新による閉塞感打破を望む幅広い市民の支持を得た。
 県内では、自民党県連と仲井真弘多知事が、米軍普天間飛行場の県外移設公約を覆したことで、政治家の公約が厳しく問われている。
 桑江氏は選挙戦中に訴えた認可保育所の増設や待機児童の解消などの子育て施策や経済振興策、福祉分野の公約の重みを自覚し、着実に実行してもらいたい。
 ただ、泡瀬沖合埋め立て事業の第2区増設の検討や、1万人規模のアリーナ建設など、大規模な財政出動を伴う施策が多い。泡瀬沖合事業は進出企業も乏しく、険しい状況が続く。経済合理性に基づく厳密な検証を欠いてはならない。
 今回の沖縄市長選は、普天間飛行場の名護市辺野古移設の是非が争点となることが確実な秋の県知事選の前哨戦に位置付けられた。
 県政与党の自民、公明などが推した桑江氏は、知事の埋め立て承認に理解を示した。一方で辺野古移設に反対する公明に配慮し、その賛否については明言を避け、争点からぼかす戦術を取った。
 公明党県本は、知事選については「候補者次第」とし、今後の対応は慎重姿勢を取っている。知事選への影響は現時点では不透明だ。
 閣僚や自公両党幹部が相次いで来県し、国政選挙並みの支援態勢を取ったが、安倍政権は選挙結果を「辺野古移設に理解」などとの印象操作に利用してはならない。
 辺野古移設反対を前面に据えた島袋氏は革新政党に加え、保守系の有力者らがつくる「市民の会」も支持母体となり、「オール沖縄市」を印象付ける戦術だったが、浸透しなかった。埋め立て承認の撤回を目指す、保革を超えた勢力の結集と選挙戦術の構築の関連性で課題を残した。
 市長を3期務めた父・朝幸氏に続き、朝千夫氏は親子2代で市政の舵(かじ)取り役の重責を担う。戦後育んだ独特の文化など沖縄市の潜在力や個性を生かして、活性化への強い指導力を発揮してほしい。