ごさまる科 己の胸中を深く掘ろう


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 沖縄の人の郷土愛が全国でも群を抜いて強いのは、各種の調査で裏付けられる。本紙が2012年に行った県民意識調査でも「ウチナーンチュであることを誇りに思う」との回答は89%に達した。

 半面、県民の琉球史に関する知識は驚くほど乏しい。学校教育で扱わないのが主因だろう。その意味で中城村が村内3小学校で「ごさまる科」と称した琉球史の授業を始めるのは画期的で、高く評価したい。他の市町村にも広がってほしい。
 中城村は09年に5月30日を「ごさまるの日」と定め、中城城跡や護佐丸を通じて郷土の歴史・文化の継承に取り組んできた。
 12年度からは沖縄振興特別推進交付金(一括交付金)を活用して教育改革の事業を立ち上げ、琉球史授業の準備を進めてきた。13年度には教材を作成。同年夏には、学校独自の時間割を作成できる「教育課程特例校制度」を文科省に申請し、翌春に指定を受けた。
 国語や社会、総合学習などとして各学年とも年間10~15時間を充てて学ぶ。小学1、2年生は創作絵本を用い、3~6年生は副読本を使用。中城城や護佐丸を軸に、グスクの形成から三山統一、第一尚氏時代、ひいてはペリー艦隊一行の中城探検まで、地元に即した素材を通して琉球史を学んでいく。
 沖縄の歴史は全国と異なる。日本史のみ教えられた子どもは常に疎外感を味わう。琉球史を知ることで子どもたちは、郷土に誇りを感じるだけでなく、自分たちがこの社会の主人公である実感を持つはずだ。その意義は大きい。
 教員たち自身、琉球史の知識は乏しいはずで、実施に踏み切るには逡巡(しゅんじゅん)もあったろう。そこを乗り越えた果敢な挑戦に拍手を送りたい。15年度には中学校にも導入する。見識に深く敬意を表したい。
 沖縄歴史教育研究会が県内の高校2年生を対象にした調査では、薩摩の琉球侵略の年を1609年と正答したのは五者択一式ですらわずか8%だった。これでは郷土の実相を把握することすら難しいだろう。
 沖縄自治研究会は琉球・沖縄史を高校で必修化するよう県議会に陳情したが、県や県教育委員会は真剣に受け止める必要がある。
 伊波普猷は「深く掘れ己の/胸中の泉/余所たよて水や/汲まぬごとに」との琉歌を詠んだ。中城だけでなく県全体で己の足元を深く掘り、自立のよすがにしたい。