四原則決議60年 沖縄の民意を尊重せよ


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 琉球政府の立法機関である立法院が米軍接収の土地の地代一括払いなどに反対する「土地を守る四原則」を盛り込んだ決議を可決してから、きょうで60年を迎えた。決議は四原則貫徹の大衆運動を後押しし、保革の枠を超えた島ぐるみ闘争へとつながった。住民の権利獲得の原動力となった決議の意味をかみ締めたい。同時に今も国土面積の0・6%しかない沖縄県に、在日米軍専用施設の74%を集中させる国策の理不尽な現実に異議を唱えたい。

 米国民政府は対日講和条約発効から半年後の1952年11月に軍用地の契約権を公布し、地主との契約を20年とし、補償評価も低額に抑えた。翌53年4月には土地収用令を公布し「銃剣とブルドーザー」による土地の強制接収を各地で始めている。住民を威嚇し、家屋をなぎ倒した。ハーグ陸戦条約は、私有財産の没収や略奪を禁じている。戦後沖縄における住民の土地の強制接収も、いくら布令で合法性を装っても陸戦条約の精神に反するのは明らかだ。
 米民政府は54年に一括払いの方針を示した。軍用地の無期限使用料を支払う内容で、低額での買い上げを意味した。これに対して立法院は決議で(1)一括払い反対(2)適正補償(3)損害賠償(4)新規接収反対-の四原則を要求した。住民の権利を守るために立ち上がった当時の議員の使命感に敬意を表したい。
 しかし2年後、米側は「プライス勧告」で一括払いを勧告した。これに対して沖縄住民は島ぐるみの大衆闘争で対抗し、一括払い撤廃を求め、日本復帰運動も推し進めていく。今に生きる私たちは、先人の非暴力の抵抗から多くの教訓を導き出すべきではなかろうか。
 昨年12月に琉球新報などが実施した県民世論調査では米軍普天間飛行場について県外・国外移設と無条件閉鎖・撤去が合わせて73・5%を占めた。県民は新基地建設を拒否している。しかし日米両政府は名護市辺野古への移設を着々と進めている。先の日米共同声明では、在沖米軍の長期駐留の方針をにじませた。
 県民無視のやり方は、一括払いで基地の無期限使用をもくろんだ60年前とほとんど同じ図式だ。これ以上、日米が強権によって沖縄を軍事植民地扱いするのは認められない。日米は民主国家らしく振る舞う時だ。普天間の県外・国外移設や撤去などによって、沖縄の基地過重負担を劇的に解消すべきだ。