ピーチ機異常降下 原因検証し安全策強化を


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 那覇空港に着陸しようとした格安航空会社(LCC)ピーチ・アビエーションの旅客機が異常降下し、着陸をやり直すというあるまじきトラブルが起こった。

 海面衝突の危機を緊急操作で回避したというから、大惨事の恐れがあった。徹底した原因の検証と再発防止策を求めたい。
 旅客機は石垣発のエアバスA320-200型。那覇空港への着陸機は通常、約5キロ手前で高度約300メートルから降下し始めるが、同機は約10キロ手前から降下し始めたという。
 国の運輸安全委員会は、機長が管制官からの「着陸準備」の指示を「着陸許可」と勘違いしたことが原因との見方を示している。
 那覇空港では、民間機は南側から着陸する場合は電波で誘導する計器着陸装置(ILS)を使用するが、北側にはこの装置がなく、管制官からの指示を受け進入する着陸誘導方式(GCA)を使用している。トラブル機は風向きの関係で南側ではなく、北側からGCA管制下で着陸体勢に入った。
 GCA管制は通常は軍用機に対し使用するが、自衛隊との軍民共用の那覇空港では天候不良や北側からの着陸の際は民間機もGCA管制を使用しているという。
 機長の「勘違い」だけで済まされるのか、軍民共用による弊害も含め管制の在り方に改善点はないのか、しっかり検証すべきだ。
 トラブルの背景にあると思われる複合的要因も見過ごせない。
 ピーチは日本のLCCの先駆けとして急成長し、国内外に計16路線、沖縄関係では国内外に4路線を運航している。沖縄観光に重要な役割を担っており、観光の好調さを支えている側面は大きい。
 しかし一方で、ピーチはパイロットの病欠が相次ぎ機長を確保できず、全体で5月以降に2千便以上が欠航する恐れもあるという。
 態勢が整っていないのに便数を増やしていたのは明らかだ。どのようにパイロットを確保しどこまで訓練をしていたのか、疑問は残る。
 世界的に航空需要が増大し、航空会社間の競争も激化している中で、パイロットら従業員の健康管理や機体整備などがおろそかにされていないか、いま一度入念に点検する必要がある。
 那覇空港は第2滑走路も今後整備され、需要はさらに高まる。利用者の生命や観光産業を守るために、万全な安全対策が重要だ。