ナイジェリア拉致 各国結束して解放を急げ


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 あまりにむごい事態を看過できない。ナイジェリア北東部ボルノ州で4月14日、武装集団が学校を襲い、16~18歳の女生徒276人を拉致した。イスラム過激派ボコ・ハラムが関与を認め、生徒を奴隷として売り飛ばすと宣言した。

 近郊では5月6日未明にも12~15歳の少女8人が拉致された。同じ集団の関与が疑われている。
 ボコ・ハラムという名称自体、「西洋の教育は罪」という意味だ。今回の犯行宣言の中でも、「女子生徒は欧米流の教育を受けるのをやめ、結婚しなさい」と繰り返している。
 だが教育を受けるのは人類共通の侵してはならない基本的人権だ。いかなる思想に基づくのであれ、断じて許せない。国際社会が一致して対処し、解放を急ぎたい。
 この集団は厳格なイスラム国家創設を目指し武力闘争を展開、これまでも学校をたびたび襲撃してきた。国際テロ組織アルカイダの関連組織から訓練を受けているとの情報もある。首都アブジャ近郊では4月14日と5月1日に爆破テロが立て続けに発生し、計100人余が死亡した。いずれもボコ・ハラムの関与が疑われている。
 今回の拉致をめぐる情報は錯綜(さくそう)している。地元紙は解放交渉が進んでいると報じたが、にわかに信じがたい。政府が当初、「ほぼ全員を救出した」と発表しながら間違いと判明した経緯があるからだ。森林地帯にあるボコ・ハラムの拠点にいるとの情報もあるが、隣国のイスラム武装勢力に、花嫁として売られたとの情報もある。
 いずれにせよ、少女らは生存しているはずだ。救出を待ち望んでいると思うと胸がふさがる。一刻も早く居場所を突き止めたい。
 ナイジェリア政府は従来、この集団との戦いへの外国の支援を拒んできた。だが今回は、政府の対応を批判するデモが頻発したこともあってか、米仏中英に協力を要請したようだ。オバマ米大統領も全面協力を表明した。軍や捜査当局の専門家を派遣し、情報面などで救出作戦を支援するという。国際社会が結束し、このような非人道的行為を許さないとの意思を示したい。
 一方で、蛮行の土壌の除去も図るべきだ。同国の貧富の格差は尋常でない。元大統領の不正蓄財は兆円単位とされる。腐敗は深刻で、司法当局も例外でないと聞く。正常な政治・行政体制確立へ向けた粘り強い支援も検討したい。