解釈改憲首相表明 独断専行は許されない


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 安倍晋三首相が北大西洋条約機構(NATO)理事会で演説し、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認に強い決意を示した。

 首相は国際公約した形にし、また一つ、集団的自衛権の行使容認に向けて環境を整えたつもりだろうか。しかし、この問題で政府の説明責任が果たされている、国民的議論が尽くされているとは到底言い難い。
 集団的自衛権の行使容認は、非軍事・平和主義に徹してきた、戦後日本の国の在り方を大きく変える。国民的議論と合意が不可欠な極めて重要な問題だ。
 共同通信が4月中旬に実施した電話世論調査では、集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更に反対する声は52・1%で、賛成の38・0%を大きく上回っている。
 国民合意どころか、疑問や不安が強いのが現状だ。こうした世論を軽視し、熟議もないまま、時の政権の解釈変更で、一首相の思い入れだけで、行使容認に突き進むことは断じて認められない。
 NATO理事会での決意表明には、中国をにらんでアジア版の安全保障体制を構築したいとの思惑もあるように見える。しかしそれは、地域の平和と安定よりも緊張と対立をもたらすだろう。
 安倍政権は憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認の閣議決定に先立って策定する「政府方針」で、自衛隊活動の地理的制約は盛り込まない方向で調整している。
 日本と中東を結ぶシーレーン(海上交通路)防衛のほか、サイバーや宇宙空間などは地理的概念が明確でない分野に対処することを考慮したためだという。
 自衛隊の活動範囲から他国の領土や領海、領空を除外し、日本領域と公海上に“限定”することで理解を得たいようだ。与党協議や国会では、事例を示した上で他国領域での自衛権行使は「想定されない」と口頭で説明するという。
 権力のおごり、暴走と言うしかない。本音は地理的制約を明文化せずに、政府の自由裁量でそれこそ「地球の裏側」まで自衛隊を派遣したいのではないか。そういった事態になった時は「想定外だった」で済ますつもりだろうか。
 首相は今国会中の閣議決定にはこだわらない意向も示している。公明党に配慮してのことだが、国民の多くも疑問や不安を抱いていることを忘れてはならない。独断専行の解釈改憲は許されない。