西沙中越船衝突 自制し行動規範策定急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 領土問題をめぐる強硬な対応は、相手からのさらに強い行動を招く。紛争に発展しかねない応酬は極めて危険だ。

 中国が実効支配している南シナ海の西沙諸島近くで中国が実施する石油掘削作業をめぐり、領有権を主張するベトナムが激しく反発し、一触即発の事態となっている。
 中国、ベトナム(越南)の双方の艦船が衝突し、越側に負傷者が出ている。越側は意図的に体当たりされたと主張し、中国船が放水する生々しい映像も流れた。米国、日本も事態の悪化に懸念を深めている。
 西沙諸島のみならず、南シナ海では南沙諸島でも領有権を主張する各国が実効支配する島が入り乱れている。「海の火薬庫」と呼ばれる南シナ海での対立がエスカレートし、紛争につながることがあってはならない。
 南シナ海をめぐっては、中国がことし1月、外国漁船に対して操業許可を義務付ける条例を制定し、領有権を誇示する動きが活発化していた。ベトナムが反発する中、国有の中国海洋石油による海底掘削が始まり、軍艦を派遣し合うなど、中越の対立が深まっている。
 南シナ海の領有権問題では、平和的解決を目指す理念が確認されている。東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国は2002年に平和、安定を目指す「行動宣言」に署名し、緊張を高める行動の自制を申し合わせている。
 さらに、ASEANと中国は昨年11月から、法的拘束力のある「行動規範」策定に向けた公式協議に入っている。中国による海底掘削は、力による現状変更に踏み込んだ形だ。行動宣言に反していると指摘せざるを得ない。
 今回の事態は、武力衝突を防ぎ、領土問題の平和的解決を導く「行動規範」の策定が急務であることを示した。
 規範は、尖閣諸島の領有権をめぐる日中の対立を解く道しるべになる可能性もある。策定に向けた交渉を停滞させてはならない。
 中越両国は「行動宣言」に立ち返って強硬手段を自制し、話し合いによる解決を急いでほしい。ASEAN各国と中国は建設的な協議を尽くし、挑発的な軍事行動や資源開発に歯止めをかける実効性の高い規範をまとめてもらいたい。
 規範づくりに直接関与できなくとも、日本は国際社会と連携して、規範づくりを後押しするべきだ。