日台漁業協定1年 権益確保に全力を挙げよ


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 クロマグロの好漁場である八重山諸島北方や久米島西方を含む排他的経済水域(EEZ)で、台湾漁船の操業を認めた日台漁業取り決め(協定)の発効から10日で1年を迎えた。

 協定は、尖閣諸島の領有権を主張する中国と台湾の連携を阻止するため、安倍政権が大幅に譲歩したものだ。沖縄の頭越しで締結された上、操業ルールを定めないまま見切り発車され、県内関係者の強い不満と不信を招いたことは記憶に新しい。
 日本と台湾は今年1月に一部水域で暫定的な操業ルールで合意したが、県内漁業者の間には安全性への懸念など依然不満がくすぶり、協定撤回を求める声も根強くある。
 日本政府は協定発効1年に当たり、漁業権益の確保が最優先されるべき課題だとあらためて肝に銘じてもらいたい。
 日本と台湾では漁船間の距離や網を入れる方向など漁の仕方が異なる。日本側は漁船衝突や漁具が絡まるなどのトラブルを避けるため、漁船間を台湾側が主張する1カイリ(約1・85キロ)では不十分とし、4カイリ以上離すよう求めていた。
 今年1月に合意したルールは、八重山諸島北方の三角形の水域と、久米島西方の「特別協力水域」内の北半分の計2水域を日本側の漁法で操業できるエリアに、特別協力水域の南半分の1水域を台湾側漁法で操業できるエリアにそれぞれ指定。さらに3月には漁業者間で、投げ縄と揚げ縄の時間帯をずらして操業することでも合意した。いずれも適用期間はクロマグロ漁シーズンの今年7月までで、今期の状況を踏まえ、来年以降のルール策定は再協議が必要となる。
 ルールの実効性が問われるのはこれからであり、ルール順守はもとより、トラブルの有無や漁獲高の推移なども含め、操業実態の詳細な把握が不可欠だ。
 4月末には台湾漁船が協定の適用水域外で操業。水産庁の取締船を振り切って台湾に戻り、台湾当局から2カ月の操業停止処分が科された。漁業者から協定に厳しい視線が向けられる中、最低限の秩序を保つためにも台湾側の厳しい処罰は当然だ。
 操業ルールについても、台湾に操業を認めた海域全域へのルール適用拡大のほか、漁船の隻数や規模、漁獲魚種制限など課題は山積する。日本政府は協定見直しも視野に入れ、毅然(きぜん)とした態度で台湾側との交渉に臨むべきだ。