ウクライナ住民投票 外交努力で混乱収拾を


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 ウクライナ東部のドネツク、ルガンスク両州で実施された「国家としての自立」の是非を問う住民投票で、親ロシア派勢力は賛成票が圧倒的多数を占めたと表明した。

 ウクライナは国家分断状態に陥っている。対立するロシアとウクライナはもとより、国際社会も、あくまで混乱の平和的解決に向け、外交努力を尽くすべきだ。
 東部2州の住民を含むウクライナの全国民には国の将来の在り方を自ら決める自己決定権があり、その権利は尊重されねばならない。
 しかし、今回の住民投票は民主的正当性に疑義がある。親ロ派は今回の投票結果を当然評価し、ウクライナ政権に対し幅広い「自決権」を要求する構えだ。これに対し、政権側は住民投票を「法的に無効だ」と非難している。
 住民投票は設問にある「自立」が独立を意味するのか、自治権拡大を意味するのか、住民の共通理解がないまま強行された。2州で向かうべき目標、将来像について熟議が尽くされたとも言い難い。
 ただ、住民投票の評価は歴史的背景も踏まえ慎重に行うべきだ。
 ウクライナは、1991年のソ連崩壊後に独立国になったが、ウクライナ東部については歴史的にロシアに支配された期間が長く、ロシア語を使い、文化的、経済的にロシアとの結び付きが強い。
 東部2州とロシアとの結び付きを考慮せず、投票した住民の思いを全否定するのはフェアではない。
 混乱を一刻も早く収拾すべきだ。2州では州庁舎などを占拠した親ロシア派勢力・武装集団と実権奪還を目指す政権部隊との戦闘で多数の死傷者を出している。
 さらにドネツク人民共和国指導部が独自の軍隊の編成を示唆するなど、東部はこのままだと治外法権化が一段と進む見通しだ。
 これ以上の流血事態は何としても回避すべきだ。国連やロシア、欧州連合(EU)が速やかに仲裁に乗り出し、親ロ、親欧州両派の直接対話を促すときだ。ロシアと良好な関係を築きつつある安倍政権も混乱の外交的解決に向け、働き掛けを強めてもらいたい。
 5月25日にはウクライナ大統領選挙が実施される。2月の政変に伴う混乱を収拾する好機であり、親ロ、親欧州両派は選挙に積極的に参加してほしい。国家再建や民族問題の折り合いの付け方について、民主的な議論を尽くすべきだ。