信号、標識見えず 安全確保と緑化の両立を


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 県内各地で街路樹に隠れて見えにくい信号や標識、白線が消えかけている横断歩道などが散見される。重大な事故につながる可能性がある。こうした状態を解消すべく、関係機関は抜本的な対策を講じてもらいたい。

 例えば、那覇市おもろまち2丁目の横断歩道は白線がほとんど消え、ここが歩道であることすら分からない。信号もないため減速せずに走り抜ける車も多く、横断する歩行者は極めて危険な状態だ。1年前に引っ越してきた女性が横断歩道だと気付かなかったことからしても、長く放置されている可能性もある。
 なぜこうしたことが起こるのか。
この横断歩道を管轄する那覇市道路管理課は定期的な巡回をしているものの「量が多くて見過ごすこともある」と説明している。また補修は1カ所だけで対応せず、年に2回ほどまとめて業者に発注しているという。管理体制と補修頻度が不十分だと言わざるを得ない。
 県警が管理する信号、停止線、標識などの補修は各警察署が巡回の時に確認し、危険性が高く補修が必要な場合は県警本部に修繕要請をする。協議を経て修繕する流れだが、修繕要請は年に数回の協議でまとめて検討されている。より迅速に対応すべきだ。
 那覇市の新都心公園では歩行者用信号、沖縄市では道路標識を街路樹が遮り、歩行者や運転手の視界に届いていない。これでは設置している意味がない。
 信号機と道路標識を管理するのは警察だ。しかし街路樹は道路を管理する国、県、市町村の管轄となる。視界を遮っているからといって、県警に街路樹を切る権限はない。関係機関が情報交換など連携を深める必要がある。
 ただ、安易な街路樹伐採を勧めているのではない。街路樹は都市緑化の向上や歩行者に日陰を提供するなど重要な役割を担っている。交通安全の確保と環境美化を両立させるためにも、行政の縦割りの弊害を排し、きめ細かい街路樹の管理を徹底すべきだ。
 横断歩道、信号、標識が見えない状況は歩行者と運転者に十分な交通安全情報を提供していないことを意味する。命を危険にさらしてはいけない。観光立県を掲げるなら、こうしたことにも目配りが必要だ。警察、行政だけでなく、地域住民も一体となった安全確保の取り組みを進める必要がある。