法人税改革案 中小や地方を切り捨てるな


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 消費税増税で家計に負担を強いる一方、首相が強い意欲を示す法人税減税ありきで議論が進むことに、強い疑問を禁じ得ない。

 政府税制調査会は、法人税改革グループの会合を開き、法人税の実効税率引き下げを明記した改革案を示した。さらに詳細を調整した上で取りまとめ、安倍政権が6月に策定する経済財政運営の指針「骨太の方針」に反映させる。
 改革案は、赤字企業も対象となる外形標準課税の強化や、中小企業優遇措置の縮小も盛り込む方向だ。法人税引き下げによる減収分を、広く浅く負担させる方向に改める狙いだ。
 ただでさえ、安倍政権は経済界に優しいと言われるが、実態は「大企業優遇、中小・零細企業冷遇」と言った方が正確だろう。
 課税対象拡大では、特定業界を優遇する租税特別措置の必要性をゼロベースで検証することも盛り込んだ。沖縄の場合、泡盛やビールの酒税やガソリン税を軽減する特別措置が対象となるだろう。「大都市優遇、地方冷遇」の影響もまた計り知れない。
 安倍政権が法人税引き下げを急ぐのは、アベノミクスの第三の矢とされる成長戦略の目玉にしたいためだ。異次元の金融緩和や財政出動で、円安株高を演出したアベノミクスだったが、肝心の成長戦略はめぼしい政策に欠ける。
 さらに安倍政権が頼みとする株価が年明けからさえないのも、成長戦略の内容に失望し、相場を支えてきた外国人投資家が売り姿勢を強めているためとされる。
 目先の利益を追求する海外投資家を喜ばすために、中小企業や地方に多大な影響を与える法人税引き下げに突き進むのは本末転倒だ。
 日本の法人税の実効税率(35・64%)が中国(25・0%)や韓国(24・2%)と比べて高く、国内大手企業の国際競争力に影響を与えているのはその通りだろう。全法人の1%に満たない大企業が法人税収の6割を担う現状を精査し、公平な税負担の観点から法人税の在り方を見直すことは一定程度理解できる。
 しかしながら、税率引き下げの経済効果や、税制全般と財政に及ぼす影響、地方を含めた成長戦略を具体的に示さないまま、大企業優遇の法人税引き下げが既成事実化することは極めて危うい。安倍政権は、税制改革の国民的論議とともに、説明責任をしっかりと果たしてもらいたい。