解釈改憲と公明党 政権の暴走に歯止めを


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 安倍政権が進める憲法解釈変更による集団的自衛権行使の容認をめぐり、与党の一角である公明党の対応が焦点となっている。

 山口那津男代表は今週始まる与党協議について「議論を通じて国民の理解を得る必要がある」と語る。「平和の党」としての存在意義と真価が問われる。公明党はそのことを肝に銘じ、安倍政権の暴走を食い止める役割をしっかり果たしてほしい。
 一方で公明党は、他国からの武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対応については、自衛隊の任務拡大を容認するなど自民党との合意を目指すという。
 外国潜水艦が日本領海から退去しない場合や、漁民を装った外国の武装集団が離島に上陸した場合などを想定し、自衛隊の出動や武器使用を緩和することが柱だ。
 グレーゾーン事態への対処は、集団的自衛権行使容認のための憲法解釈変更とは直接には関係しない。このため公明党には、グレーゾーン事態対処の協議を優先させることで、集団的自衛権行使容認に関する議論を先送りしたいとの思惑もあるとみられる。
 しかし姑息(こそく)な対応では、いずれは集団的自衛権行使容認で自民党に押し切られる恐れがある。
 支持母体の創価学会は「国民を交えた、慎重な上にも慎重を期した議論によって、歴史の評価に耐え得る賢明な結論を出すことを望む」と異例の見解を示した。公明党は政権暴走の補完勢力ではなく、いざとなれば政権離脱も辞さない不退転の決意で平和憲法を守る防波堤になってもらいたい。
 創価学会の見解に対し、自民党の石破茂幹事長は政教分離も念頭に「支持母体の言うままということもないだろう」と牽制(けんせい)した。
 しかしそれを言うなら、一首相の私的諮問機関によってリードされる憲法解釈変更の議論の在り方こそ問題ではないのか。重大な国の針路変更が実質的に首相の思うがままに行われかねない状況に、何の疑問も感じないのか。民主国家であるはずの国の中枢で、公明正大であるべき議論の場の私物化がまかり通り、主権者の国民や国会が蚊帳の外に置かれる状況は極めて危うい。
 創価学会の異例の見解表明も、国民不在、民主主義無視の非道なやり方に対する最低限の異議申し立てと理解すべきだ。安倍政権による解釈改憲の動きに、民主的正当性があるとは到底思えない。