解釈変更と世論 姑息な手法で憲法壊すな


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 国会議決、国民投票という憲法改正手続きを経ずに、姑息(こそく)な手法で憲法を壊すことはまかりならぬと、国民は異議を申し立てている。

 共同通信社の最新の全国電話世論調査で、集団的自衛権の行使を憲法改正ではなく政府の憲法解釈の変更によって認めるとの考えに対し、反対が51%に上った。
 安倍晋三首相は15日の記者会見で集団的自衛権行使の具体例として、朝鮮有事などの際に避難する在外邦人を乗せた米艦を防護する必要性を強調。「お子さんやお孫さんたちが(有事の)場所にいるかもしれない」と訴えた。
 しかし国民は首相の言葉に惑わされず、解釈変更に拒絶反応を示した。世論調査では首相が執着する集団的自衛権の行使容認についても反対が48・1%に上り、賛成は39%にとどまった。
 歴代政権は集団的自衛権の行使について、戦争放棄と戦力の不保持を定めた憲法9条を踏まえ「許容された必要最小限の範囲を超える」と解釈、一貫して行使を禁じてきた。安倍首相は経緯を事実上無視し、憲法解釈変更に血眼になっている。これは立憲主義を顧みぬ独断専行というほかない。
 15日には集団的自衛権の行使に前向きな識者で構成する私的諮問機関「安保法制懇談会」から憲法解釈変更の提言を受け、あらためて解釈変更への意欲を示した。
 自民党も解釈変更一色ではない。野田聖子総務会長は月刊誌のインタビューに対し、政策の安定性の観点から解釈変更に疑義を唱えた。
 野田氏は反対意見を含めた本格論議の必要性を提起し、「国際情勢という大きな状況と、人を殺す、人が殺されるかもしれないというリアリズムを語るべきだ」と指摘。人口減少が深刻化する近未来を見据え、持続可能な安全保障を次世代に残すべきだと強調している。
 世論調査では、首相が私的な懇談会を活用して安保政策の転換を提起したことを納得できるとする回答が35・6%、納得できないが48・6%だった。国民は首相の政治手法を疑問視している。
 安倍政権の暴走により、戦争放棄をうたった平和憲法の形骸化が進むことは断じて看過できない。国会は政権の暴走を厳しくチェックすべきだ。首相肝いりの法制懇とは別に、国会に各党推薦の有識者による新たな安保法制懇を設置し、多角的な議論を行うべきだ。