児童施設出身者進路 包括的な支援が必要だ


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 高校卒業後、18歳で児童養護施設を出た若者たちが、進学や就職面でさまざまなハンディを抱えている。公的助成の拡充をはじめ、社会全体で包括的に支援したい。

 本紙の調査によると、県内8施設を過去5年間に退所した人の大学・短大進学率は約11%にとどまり、県全体の平均約37%を大きく下回ることが分かった。各施設は学費の工面の難しさを訴えており、経済的な問題が施設出身者の進学機会を阻んでいる実態が浮き彫りとなった。
 厚生労働省によると、標準的な可処分所得の半分(2009年では4人家族で年250万円程度)を下回る世帯で暮らす18歳未満の子どもの割合(貧困率)は09年時点で全国で15・7%で、国際的にも高水準だ。ひとり親世帯ではこの割合が50%を超え、経済協力開発機構加盟国中でも最悪の水準だ。
 貧困、格差は近年さらに悪化しているとの報告もある。経済的事情で進学を諦め、それが職業選択でも不利に働き、大人になってからの生活にも影響する「貧困の連鎖」問題も、指摘されて久しい。
 沖縄は所得水準が全国最低である一方、地域内の所得格差は全国よりも大きいとされ、貧困をめぐる状況はなおさら深刻だ。貧困の連鎖を断ち切り、子どもの教育機会の平等を確保することは喫緊の課題であることを再確認したい。
 児童養護施設は保護者のいない児童やさまざまな事情で保護者の養育が困難な子どもを受け入れている。児童福祉法により原則18歳で施設を出ることになるが、就職面でも多くの障害を抱える。
 住居の確保に向けた必要資金の確保、住居探しや就職の際などに求められる保証人探しなどが困難なため、社員寮を併設する特定の業種に就職が集中する傾向もあるという。進学でも就職でも若者が自らの選択肢を狭めることがないよう、物心両面で支援する公的な仕組みづくりが急がれる。
 昨年6月、生活が苦しい家庭の子どもの教育支援に関する「子どもの貧困対策推進法」が成立し、国と自治体が協力して対策を実施する責任が明確化されたが、関係団体は返済不要の給付型奨学金創設など、具体的な支援策を求めている。
 学習や生活の支援に加え、子どもが夢と希望を抱けるようなキャリア教育も重要だ。経済力など家庭の事情で子どもの可能性が閉ざされる社会であってはならない。