沖縄三越9月閉店 市街地再生へ英知結集を


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 創業57年の県内老舗百貨店、沖縄三越(杉山潤治社長)が9月21日に閉店し、同月末で全事業を終了する。那覇市の国際通りを象徴する大型商業施設の幕引きは、新たな顧客開拓に苦戦する百貨店事業を取り巻く経営環境の厳しさをあらためて浮き彫りにした。

 沖縄三越の事業は、地元資本のリウボウグループが引き継ぐ方向で調整している。百貨店跡は来春以降、新たな観光商業施設として開業する計画で、本店従業員140人(非正規含む)のうち一部を受け入れる方針だ。
 幸いにも、沖縄の顔でもある国際通りの中心に空白地帯が長く生じる最悪の事態は回避されそうだ。リウボウと関係金融機関は持続的発展が見込める施設構想をまとめ、周辺の通り会や近隣の店舗との共存共栄の道を切り開いてほしい。
 雇用対策で沖縄三越は、再就職支援室を設置し、県内外への就職をあっせんするほか、国や県、那覇市などと連携し支援策を講じる方向だ。雇用不安が生じないよう行政の関係機関と共に対策に万全を期してもらいたい。
 沖縄三越は2003年の私的整理を経て、04年から10年計画で企業再生に取り組んできたが、業績は回復しなかった。1993年2月期には118億円を売り上げたが、14年2月期は76億円とピーク時の3分の2程度にまで落ち込んでいた。
 細かな店舗リニューアルを繰り返したが、手薄だった若い層を取り込むための戦略は構築できず、郊外型の大型スーパーなどへの顧客流出を食い止められなかった。杉山社長は「業態間競争、地域間競争、消費動向、景気など内外の変動にスピーディーかつ的確に対応できなかった」と述べたが、それは経営不振に陥っている地方百貨店の構造的な課題でもある。
 一方、沖縄を代表する中心市街地の変遷と浮き沈みは、県民の生活様式や消費行動など社会変化を映し出す“合わせ鏡”でもあろう。
 今や国際通りは、土産品店が軒を連ね国内外の観光客でにぎわう観光地だ。駐車場の不足や慢性的な交通渋滞などが地元客の足が遠のく理由ともされるが、近隣のジュンク堂書店那覇店が多くの県民でにぎわう状況は、魅力ある店舗づくりの重要性を強く示唆している。三越閉店を機に、時代の変化を踏まえた中心市街地の活性化の在り方についても官民の英知を絞りたい。