名護市長訪米行動 辺野古移設は背信行為だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 稲嶺進名護市長が15日から24日までの日程で米国を訪問している。政府関係者や識者、市民ら幅広い層の米国人に対し、普天間飛行場代替施設の名護市辺野古への移設に反対する意思を伝えている。19日には米国務省のヘムシュ日本部副部長と会談したが、ヘムシュ氏は「国と国の間で決めたこと」として辺野古移設を進める考えを示した。

 稲嶺市長が「2年前の訪米に比べ、知事の埋め立て承認でなお厳しくなった」と述べているように、知事の承認が米側に辺野古推進やむなしとの受け止め方を広げているようだ。
 知事承認後の琉球新報社の世論調査では知事の承認判断を公約違反とみなす回答は72・4%に上っている。今年4月下旬の世論調査でも辺野古移設反対は73・6%に上っており、県内世論と乖離(かいり)した知事承認が米国世論に影響を及ぼしていることは極めて残念だ。
 一方で移設反対に理解を示す人もいる。ジム・ウェッブ元上院軍事委員会委員は「自分は今でも辺野古移設は難しいと思っている」と述べ、個人の立場での協力を表明した。ケイトー研究所のダグ・バンドー上級研究員は「島の20%が70年近くも基地に占拠されているのは明確な不公平だ。ワシントンと東京は真摯(しんし)に向き合わなくてはならない」と市長に語っている。
 ニューヨークでの有識者、市民との交流会合ではノーベル平和賞受賞団体「アメリカンフレンズ奉仕委員会」のジョセフ・ガーソン氏が辺野古移設反対を求める取り組みの実行を表明した。市長の要請行動は米政府の壁の厚さを認識させたが、一方で沖縄世論を米側に伝え、支持を拡大させてもいる。その意義は非常に大きい。
 こうした中、日本政府は移設計画を着々と進めている。海底ボーリング調査に向け、防衛省は7月にも現場海域にブイを設置する計画だ。また提供水域での反対行動の刑事特別法での取り締まりを容易にするため、在沖米軍基地の提供・使用条件などを定めた日米間の合意文書「5・15メモ」の解釈を拡大することも検討している。
 何が何でも移設を強行しようとする政府の姿勢は沖縄の民意への背信行為だ。稲嶺市長が米国で訴えた「移設に反対する私が2度にわたり市長選で当選した。結果を受け止めてほしい」との言葉は、日本政府こそ真剣に聞くべきだ。