全駐労全面勝訴 地位協定改定が本筋だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 不当に労働者の権利を侵害する行為は、日米地位協定で手厚い権限を付与された米軍であろうとも許されない。米軍基地従業員をめぐる米軍の不当労働行為が、司法の場で厳しく指弾された。

 在沖米軍が基地従業員の年休取得を認めずに雇用主の国が賃金カットしたのは違法として、全駐労沖縄地区本部所属の組合員176人が、未払い賃金と制裁金に当たる付加金の支払いを求めた訴訟で、那覇地裁は原告側全面勝訴判決を言い渡した。
 年休取得は労働者の権利であり、不当に制約できない。判決は日本の労働法に基づき、使用者である在日米軍が違法行為を働いた場合は制裁対象となることをはっきりさせた。「治外法権」の壁を崩す画期的な判断と評価できよう。ただ、課題はまだ山積している。
 判決は国と在日米軍の関係をめぐり、「雇用主としての権利義務を分掌している」と指摘した。米軍側に雇用主として応分の責任を果たせと促し、違法な行為をやめるよう警告した形である。
 国と在日米軍は判決を重く受け止め、労働環境の抜本的改善に自ら乗り出すべきだ。
 長時間の超勤や度重なる休日出勤命令など、日本の労働法規を軽視する米軍の理不尽な労務管理はこれまでも頻発してきた。
 日米両政府が交わす基本労務契約には労働法規を度外視した定めがある場合があり、「無法地帯」とも称される劣悪な労働環境が生じる要因となってきた。
 こうした弊害の根本には、排他的な基地管理権を与えた日米地位協定とその抜け穴がある。
 基地従業員は、日本政府が雇用主でありながら、現場で業務を指示する使用者は米軍という複雑な環境で働く。地位協定12条は「労働者の権利は日本の法令による」と定めつつ、前段で「(日米)相互間で別段の合意をする場合を除き」との例外規定を設けている。
 「別段の合意」の基本労務契約が優先され、人事配置や給与や労働時間の変更などは米軍の同意がないとできない仕組みだ。地位協定の抜け穴が、法に基づく適正な労働環境構築を阻む厚い壁となっている。
 米軍の恣意的な労務管理を防ぎ、日本の労働法を順守させる最も効果的な手だては、例外規定を削除する地位協定の改定である。基地内の労働者を守るため、本筋の地位協定改定のうねりを広げたい。