大飯原発差し止め 命を最重視した判決だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを訴えた訴訟で、福井地裁は関西電力に再稼働を認めない判決を言い渡した。

 安全を軽視し再稼働を優先させた政府と関電の判断を厳しく批判し、原発の安全神話を否定した。原発は「人格権より劣位に置かれるべきだ」と踏み込んだ。生命を最重視する歴史的な判決といえるだろう。
 最大の争点は、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)を超える地震が起きた際、重要施設に影響が出るかどうかだった。
 判決は原発の安全性について司法が独自に判断する姿勢を打ち出し、個人の生命や身体、精神などの人格権を重視する方向性を明確に示した。その上で、基準地震動を超える地震が来ないという関電の主張を、国民の安全を優先せず「確たる根拠のない楽観的な見通し」と断じている。
 原発の電力供給の安定性、経済性を主張する関電に対し、「多数の人の生存にかかわる権利と電気代の高い低いという問題を並べることは法的に許されない」と批判した。原発停止で多額の貿易赤字が増え国富喪失につながるという主張は、「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していることが国富」だとして退けている。
 福島原発事故を「わが国最大の環境汚染」と認定し、原発はCO2(二酸化炭素)排出削減につながるとする関電の主張を「甚だしく筋違い」と一蹴した。
 説得力のある論理構成で関電の主張を全面的に否定した。重く受け止めるべき関電は判決を欠席した。不誠実ではないか。今回の判決は「想定を超える地震が来ないとは限らない」と全国の原発に共通する危険性を指摘している。係争中の裁判に影響を与えるだろう。現在、電力9社の11原発18基が原子力規制委員会の審査中だ。判決に耳を傾け、原発にしがみつく経営と決別すべきだ。
 今回の判決は、原発再稼働と輸出に前のめりな安倍政権に対する警告である。安倍晋三首相は真摯(しんし)に向き合い、原子力政策を見直すべきだ。原子力規制委員会の第三者機関としての存在意義も問われている。
 原発事故から3年が過ぎても、約13万人が避難生活を余儀なくされている。判決で指針とされた人格権が侵害され続けていることを忘れてはならない。原発のない社会の実現こそ福島の教訓だ。