那覇市樋川の農連市場の再開発を目指す農連市場地区防災街区整備事業が県から認可された。2015年着工、18年度完成の予定だ。
昔ながらの相対売りなど農連市場の機能を維持しつつ、災害に強く、県民や観光客にとって魅力的な街づくりを進めるという。
具体的には約3・2ヘクタールの敷地に総事業費約158億円を掛けて、店舗や駐車場などを備えた建物、分譲住宅、市管理の保育所と集会所、市営住宅などを整備する。
周辺の小中学校も併せ、若年世代などの定住環境が整うことになる。経済機能と生活機能の修復を多角的に指向している点は、地域再生への哲学を感じさせ興味深い。
農連市場の再開発は、1984年に那覇市と住宅都市整備公団(現・都市再生機構)が整備構想案を策定。地権者との交渉や計画に関する合意形成などに30年もの歳月を要したのは、時間がかかりすぎた感も否めない。
だが見方によっては、那覇市が単に箱物の建設ではなく、市の将来像や地権者の意向、市民の夢を反映させ、市街地活性化に本腰を入れた表れと理解できなくもない。
農連市場は従来、延焼防止や災害避難などが考慮されておらず、老朽化した建物の耐火性も問題視されていた。再開発で耐震性・耐火性の高い建物や避難路を整備し、安全な街を具現化してほしい。
少子高齢化や大駐車場を備えた郊外型ショッピングセンターの展開などを背景に、全国各地で中心市街地の経済・生活機能の脆弱(ぜいじゃく)化が指摘されている。先に沖縄三越の閉鎖が決まった那覇市でも、今後いかに中心市街地の都市機能を再生するかが大きな課題となる。
こうした中、農連市場関連の再開発の成果と波及効果に大きな期待がかかる。事業主体の那覇市農連市場地区防災街区整備事業組合の責任者は「人とモノが行き交い、沖縄文化の中で生き生きと住み続ける『マチグヮーセンター』をコンセプトに再生を図りたい」と意欲を示している。首肯できる理念だ。
この「人」が意味するところは、昼間の観光客や郊外からの買い物客だけでなく、そこに定住する生活者でもあると理解したい。
市街地の空洞化は食い止めねばならない。関係者には、都市再生のモデルを那覇から発信していくとの気概を十分共有しつつ、丁寧に再開発事業を進めてもらいたい。