中国機異常接近 軍事挑発は有害無益だ


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 東シナ海の公海上空で24日、海上自衛隊のOP3C画像情報収集機と航空自衛隊のYS11EB電子測定機が、一時的に中国軍のSU27戦闘機2機の異常接近を受ける危機的な状態に陥った。

 防衛省によると、海自OP3Cには約50メートル、空自YS11EBには約30メートルまで近づいた。戦闘機はミサイルを搭載していたという。防衛省の説明が事実なら、これは中国機の常軌を逸した近接と指摘せざるを得ない。中国は自制すべきだ。
 中国国防省は自衛隊機2機に中国機が緊急発進(スクランブル)したと発表、「(自衛隊機が中国とロシアの)合同軍事演習を監視、妨害した」と主張している。これに対し、小野寺五典防衛相は「通常の警戒監視であり、国際法に従った正当な行為だ」と反論している。
 こうなると水掛け論だ。日中両政府は正確な情報把握に努め、あくまで事実に基づく危機管理に徹するべきだ。同時に軍事的挑発は偶発的な武力衝突を助長しかねず、有害無益だと肝に銘じるべきだ。
 自衛隊、中国軍から犠牲者が出る前に、偶発的衝突を回避する仕組みの確立を急ぐ必要がある。日中は直ちに高官協議を開き、確実に意思疎通を図り衝突を回避する緊急措置について確認してほしい。
 東シナ海では、2012年9月の日本政府による尖閣諸島国有化以後、中国軍が活動を活発化させ、一触即発の緊張関係が続いている。
 中国には領土・歴史問題で日本側に不満があるのだろう。しかし軍事的な示威行動は問題をこじらせるだけで決して生産的ではない。
 一方、日本側も離島奪還訓練を実施したり、尖閣問題への米軍の関与を働き掛けたりするなど、安全保障政策が軍事面に偏りすぎている点は根本的に見直すべきだ。
 安倍晋三首相と習近平中国国家主席には、率先して日中国交正常化の原点に立ち返ってもらいたい。1972年の日中共同声明で、両国は恒久的な平和友好関係の確立に合意し、相互の関係において「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」と確認している。
 両首脳は、事務方のお膳立てを待つことなく速やかに会談し、日中が東アジアの平和と安定で果たすべき役割、歴史問題の解決策などについて胸襟を開き話し合ってはどうか。日中関係の改善へ向け強いリーダーシップを求めたい。