はえ縄切断 米軍回答遅れは不誠実だ


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 沖縄近海のマグロ漁が最盛期を迎える中、県内マグロ漁船のはえ縄が切断される被害が16日から25日までに相次いで7件発生した。米海軍艦艇の関与が強く疑われている。県漁業協同組合連合会が沖縄防衛局を通して米海軍に関連について照会しているが、27日現在、回答はない。

 たまたま漁具の被害にとどまっているが、衝突など一歩間違えれば、生命に関わる大惨事につながりかねない、ゆゆしき事態だ。漁民らの不安を一刻も早く解消するためにも、米軍は速やかに回答し、事実関係をつまびらかにすべきだ。
 マグロ漁期は4~6月と限られている上、日台漁業取り決め(協定)により日本の排他的経済水域(EEZ)内で台湾漁船の操業を認めたことで、ただでさえ好漁場は狭まっている。
 たくさんの針と餌を付けたはえ縄は延長100キロを超えることもあり、価格も高価だ。いったん切断されると、修理に時間もかかる。はえ縄の相次ぐ切断被害は、漁民にとっては死活問題と言っても過言ではない。
 県漁連など関係者によると、被害が相次いだ時期に、周辺海域を航行する米海軍の音響測定艦「インペッカブル」が目撃されている。低周波ソナー(音波探知機)を備えた艦船で、海中調査の際にえい航したソナーがはえ縄に絡まった可能性が指摘されている。
 昨年も久米島周辺海域で、宮崎県や鹿児島県のマグロ漁船十数隻のはえ縄が海上自衛隊や米軍の艦艇に切断される被害が相次いだ。海洋進出を活発化させる中国艦艇の動向を探るため、警戒活動が強化されている実態もあろう。
 しかし、国防上、必要な調査だからといって、米艦艇などに傍若無人な振る舞いが許されていいはずがない。好漁場で多くのマグロ漁船が操業する中、はえ縄切断の危険を知りつつ航行しているとすれば、言語道断だ。
 いずれにせよ、今回のはえ縄切断について、米海軍は関与の有無を直ちに明確にすべきだ。漁民は操業への不安を募らせており、回答の遅れは不誠実の極みだ。仮に関与した
のならば、速やかに漁具の損害賠償はもちろん、漁業補償も検討すべきだ。そして、二度と同じ過ちを繰り返さぬよう、日米両政府は、米艦艇の航行の事前通達など、再発防止策を厳重に講じる必要がある。