辺野古の規制水域 民意踏みにじる策動だ


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 政府が、米軍普天間飛行場の移設を予定する名護市辺野古沿岸部の漁業制限水域を拡大する手続きを進めている。操業を常時禁止する水域は現在、沿岸から約50メートル沖までだが、これを最大2キロに広げる方針だ。尋常な計画ではない。

 操業禁止区域を拡大する目的については明確に説明していないが、7月に予定する移設工事に向けた海底ボーリング調査に向け、移設に反対する住民らの海上抗議活動を制限する狙いがあることは明らかだろう。
 米軍キャンプ・シュワブ沖の辺野古沖では現在、日米安保条約に基づく漁船操業制限法により制限水域が設定されている。操業を常時禁止する第1種区域、網を使った漁業など米軍の行動を妨げる恐れがある漁以外は認める第2種区域、演習期間中の禁止を定めた第3、第4種区域に分かれる。
 今回の拡充では第1種区域を、今の第2種区域をほぼ覆う形で大きく広げるという。代替基地の建設工事区域の全体に広げる形だ。移設計画に関しては、ボーリングをはじめ海域の本格的な調査もまだ行われていない。県民の権利を制限する水域を、いたずらに拡大するのは許されない。
 漁船操業制限法は漁船の航行制限に関する取り決めだ。2004年に辺野古でボーリング調査が行われた際、抗議活動に使われたカヌーなどは対象外だが、政府は、漁船操業禁止区域の拡大と併せて、在沖米軍基地の提供・使用条件などを定めた日米間の合意文書「5・15メモ」に基づくシュワブ提供水域についても、同様に範囲を広げる方向で議論を進めている。
 政府内では、このシュワブ提供水域に関する5・15メモの解釈を変更することで、ボーリングの調査海域に近づくカヌーなどの活動に対しても、刑事特別法(刑特法)を適用して取り締まることが可能だとの見解をまとめているという。
 こうした検討は関係省庁が水面下で進めている。防衛省は、移設工事の際に沖合にブイを設置する方針を先に認めたが、安全確保が目的だとしている。そうであれば、水面下で国民の目を逃れて進めるのではなく、正々堂々と議論すべきではないか。
 制限水域見直しに、是が非でも移設を強行しようという安倍政権の意図があるのは明らかだ。移設に反対する民意を踏みにじる策動は許し難い。計画の撤回こそが民主主義国家の本来の姿ではないか。