日本維新分裂 理念なき数合わせの限界


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 日本維新の会が分党を決めた。水と油のような政策の違いを覆い隠した数合わせの限界を露呈した。

 分裂の引き金は、維新と結いの党の合流をめぐる、石原慎太郎、橋下徹の両共同代表の対立だ。石原氏は、自主憲法の制定を政策合意に盛り込むよう強硬に主張したが、結いとの合流を優先した橋下氏は受け入れず、石原氏が党を出ていく形となった。別の方向を向く双頭体制の矛盾がもたらした帰結と言えよう。
 第3極による政治改革を期待した有権者は裏切られた思いがあろう。維新の2枚看板だった橋下、石原両氏は新たな政治不信を招いたことをまず猛省すべきだ。
 2012年12月の衆院選前、橋下氏が率いる日本維新の会に、石原氏が結党した太陽の党が合流。大阪府知事から大阪市長に転じた橋下氏と、東京都知事だった石原氏が地方分権を掲げて連携し、官僚支配、中央集権に風穴を開けるーとの一定の期待を集めた。
 民主党に迫る53議席を獲得し、野党第二党に躍進した。しかし、この1年半でほとんど成果らしい成果は残せなかった。今となっては、理念や政策の一致を二の次にした合流劇自体、選挙目当ての野合だったという評価しか下せまい。
 日本維新は当初から知名度が高い橋下、石原の両代表の人気頼みで、政策の根本的な溝を埋める動きは見られなかった。憲法をめぐり、首相公選制など統治機構改革に比重を置き、脱原発色を強めていた橋下氏は、石原氏がこだわる自主憲法制定や原発容認との距離を取りあぐねた。逆に橋下氏自身の姿勢もあいまいさを増し、自民寄りに傾いていた。
 維新は巨大与党の政策を厳しくチェックし、暴走に歯止めを掛ける野党の役割を忘れたのではないか。そんな疑念も拭えない。昨年の特定秘密法案をめぐる国会審議で自民にすり寄って成立を後押しし、集団的自衛権をめぐる審議でも行使容認の姿勢を強めている。
 安倍政権の安全保障政策や経済政策に対し、国民の批判が高まりつつある中、維新はじめ野党側は対立軸を示せず、安倍政権の一強状態を招いている。野党各党はあらためてその使命を自覚してほしい。
 維新分裂は野党再編の呼び水になる可能性がある。野党側は政策、理念を一致させる努力を尽くし、政権与党の監視という役割をしっかり果たしてもらいたい。