嘉手納発着急増 実効性伴う改善策が急務だ


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 日米両政府が繰り返す米軍嘉手納基地の負担軽減は、しょせん県民の反発を一時的にそらすための空手形にすぎないことがあらためて鮮明になった。

 嘉手納基地への航空機の離着陸回数が2013年度は計4万7078回を記録し、12年度を約1万回上回り(26・9%増)、10年度以降で最多となった。沖縄防衛局が民間業者に委託した目視調査結果を公表した。
 これは午前6時~午後6時の離着陸や、戦闘機が着陸直後に再加速し離陸する「タッチ・アンド・ゴー」などの回数にすぎず、夜間や未明の離着陸は含まれていない。
 嘉手納基地は地域住民の強い反発をよそに、実質的に米軍の自由裁量で24時間運用されている極東最大の米軍基地だ。午後6時~午前6時の離着陸を含めると、騒音をまき散らす飛行実態はさらに深刻さを増す。周辺住民が夜間から早朝にかけての米軍機の飛行差し止めを求めて訴訟を起こしていることが過酷な実態を物語る。
 13年度の離着陸回数の内訳を見ると、常駐機のF15戦闘機が1万4914回で前年度より5割も増えた。外来機の離着陸も24・0%増の1万2342回と大幅に増えた。日米両政府は「負担軽減」というまやかしの言葉遊びをいいかげん封印しなければならない。
 日米両政府は10年5月に、訓練の県外移転拡充で嘉手納基地周辺の騒音を軽減することで合意。11年1月にはF15訓練のグアム一部移転で合意している。しかし、訓練移転による負担軽減どころか、ステルス戦闘機F22ラプターの一時配備など、米本土や在韓米軍などの戦闘機の飛来が増え、「機能強化」されているのが実態だ。
 実際、訓練の増加を裏付けるように嘉手納基地所属機の事故が多発している。昨年5月にはF15が本島東方の海上に墜落。同8月にはHH60救難ヘリがキャンプ・ハンセン内に墜落し乗員1人が死亡した。落下事故も相次ぎ、今年1月以降に既に7件発生している。もはや異常事態と言うほかない。
 嘉手納基地には今後、オスプレイや最新鋭無人偵察機の配備なども取り沙汰される。騒音被害や危険と隣り合わせの地域住民の我慢は限界をとうに超えている。日米両政府は、負担軽減に大きく逆行する基地の運用実態を直視し、訓練移転や飛行制限など実効性を伴う改善策に直ちに取り組むべきだ。