人口減対策 次世代支援の拡充急ぎたい


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 経済・社会の持続的発展に向け、子育て支援策などの在り方を根本から見直す必要があろう。

 政府は6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太方針」に、50年後も人口1億人程度を維持する目標を掲げる。抜本的な少子化対策を講じ、第3子以降の出産、育児、教育への支援を拡充する方針だ。
 首相を本部長とする戦略本部を設けることも検討している。政府を挙げて取り組もうという姿勢は評価できる。実効ある取り組みを求めたい。
 日本の人口は、2012年で1・41の「合計特殊出生率」が回復しない場合、現在の1億2700万人から60年には約8700万人に減少する見通し。人口減に伴う労働力不足が経済成長や財政に悪影響を与えると懸念されている。
 60年に1億人を維持するためには出生率を2・07に高める必要があるという。フランスでは出生率が1990年代半ばに1・6台に落ち込みながら、その後急回復した(12年は2・01)。決して不可能な目標ではないだろう。
 そのためには子育て世代への支援拡充が不可欠だ。出産や育児などの「家族関係社会支出」が国内総生産(GDP)に占める比率は、出生率が回復したフランスやスウェーデンでは3%台だが、日本では1%程度にとどまるという。
 教育機関に対する公的支出の対GDP比率が、経済協力開発機構(OECD)加盟国で4年連続の最下位との直近のデータもある。高齢者が優遇され過ぎとの指摘もある社会保障制度の改革論議と並行し、次世代支援の強化を考えるべきだろう。財政支援と併せて、女性の就労拡大へ育児と仕事を両立できる仕組みづくりが重要だ。
 有識者らの日本創成会議の分科会が先に、人口の自然減や都市への流出が続けば全国523自治体が消滅する可能性があると指摘した。県内9町村も含まれている。
 地方の人口減少に歯止めをかけるために、若い世代が地元で子どもを生み、育てられるための生活環境整備、特に雇用の創出が急務だ。最低賃金の引き上げや地方への税制優遇など大胆な施策を検討すべきだ。
 日本の数少ない人口増加地域である沖縄も25年ごろには人口減に転じるとされ、離島やへき地の深刻度は全国と同様だ。県は人口増加施策を展開する方針だが、過疎地対策を重視し、県土のバランスある発展をぜひ図ってもらいたい。