本島南東沖地震 減災へ英知を集めよう


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 もはや「沖縄では巨大地震は起きない」との先入観はきっぱりと捨てた方がいい。これは、それぐらい衝撃的な数値である。

 沖縄本島南東沖3カ所を震源とする地震が連動した場合、最大規模はマグニチュード9・0で、死者は1万1340人、負傷者は11万6415人、建物全壊は5万8346棟となる-。県が30日に発表した最大の被害想定だ。
 死者数が2010年発表の3473人と比べ、8千人近く増えた。津波発生の原因となる断層の規模を広く捉え直したり、三断層が連動した地震を新たに想定したりしたため、被害想定が深刻化した。
 震度は本島と周辺離島、宮古島地方で5強から6強、八重山地方や久米島、大東島で4から5強になると想定。津波の高さは東日本大震災時のそれに匹敵し、最大30メートルを超えるという。発表を直視し、家庭や地域、学校、職場などで地震への備えを徹底し、防災や被害を抑える減災に努めてほしい。
 防災に関わる公的機関にもより危機感を持った対応を求めたい。
 南海トラフ巨大地震対策の指針である政府の「防災対策推進基本計画」では、人的被害を減らすため、津波避難ビルの指定や防潮堤整備、木造住宅密集地の防火対策を重点課題に挙げた。2008年に79%だった全国の住宅耐震化率を15年度に90%へ引き上げるなどの数値目標も掲げた。
 県内でも大地震と津波による死者数と全壊・焼失建物数の大幅抑制に向け必要な策を講じるべきだ。
 具体的には建物や天井、照明器具などの耐震化、巨大津波に備える防潮堤や避難路などの整備を進めねばならない。ただ、必要以上に海岸を壊して長大堤防を建設し、自然の猛威にあらがうかのような技術力の過信は厳に慎むべきだ。
 大震災の教訓に学べば、例えば避難に手間取りそうな学校や病院、老人・障がい者福祉施設などは、最初から避難を必要としない場所に設置したりする配慮があってもよい。自主防災組織の創設や確実な避難ルート・場所の確保などによって、住民同士の「共助」の環境を整えることも必要だろう。
 被害想定づくりに携わった仲座栄三琉大副学長が指摘する通り、今回の報告は「3・11を思えば決して大げさではない」。県内の全ての公的機関は災害関連計画の見直しに速やかに着手してほしい。