戦闘地域に自衛隊 これは「積極的戦争主義」だ


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 憲法の意味を一内閣の思惑で勝手に変える解釈改憲に安倍政権は前のめりだ。集団的自衛権の行使だけでなく、海外への自衛隊派遣でも解釈改憲しようとしている。

 政府は、憲法が禁ずる「他国軍との武力行使の一体化」の意味を変え、自衛隊が支援できる内容を拡大する案を与党に示した。
 他国の戦争に巻き込まれる危険性が一気に高まる。外国で自衛隊が血を流すことをどれほどの国民が許容しているというのか。安倍晋三首相の言う「積極的平和主義」の表れだが、これでは「積極的戦争主義」そのものだ。無限定に戦争への道を開く危険な解釈改憲は許されない。
 憲法9条は武力行使を禁じている。ただし、正当防衛に相当する個別的自衛権の行使は、必要最小限なら許されると政府は解釈してきた。だが1992年の国際平和協力法で、「紛争当事者による停戦合意と受け入れ同意」などの条件を満たせば、自衛隊の海外派遣も可能となった。2001年のテロ対策特措法では、停戦合意がなくても、派遣期間中に戦闘行為がない「非戦闘地域」なら派遣可能とした。ただし活動内容は水や食料の補給、医療などに限定する。
 今回の提起は、地域による限定という考え方そのものを取り払うものだ。別途四つの条件を示し、四つともそろった場合だけ「武力行使の一体化」に当たるとみる。条件は(1)現に戦闘中の他国軍への支援(2)戦闘行為との密接な関係-等で、どれか一つでも当てはまらなければ、水や食料どころか、武器弾薬ですら提供可能となる。弾薬も、1カ月後に使うためなら「戦闘行為との密接性」がないので提供可能、となりかねない。
 憲法9条の歯止めをなし崩しにするものだ。これが認められれば9条が禁ずる実質は何一つなくなる。事実上の9条撤廃に等しい。
 しかし4条件など机上の空論だ。86年に国際司法裁判所が出した判決は、武器提供だけでなく「兵站(たん)またはその他の支援」も武力行使に該当すると定めた。日本がどう解釈しようが、支援する他国軍の戦う相手が、自衛隊の活動は武力行使とみなすということだ。すると攻撃され、戦争に巻き込まれることになる。
 政府・自民党はあえて大胆な案を出し、4条件を一つにするなどして譲歩したかのように装い、着地点を探るつもりなのだろう。そんな「偽装」は許されない。