若年性認知症 多角的な施策推進を急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県が初めて実施した実態調査で、18~64歳の若年性認知症と診断された人が県内に少なくとも382人いることが分かった。医療機関などからの回答率が約70%にとどまることなどから、実数はさらに増えるとみられる。調査結果を踏まえ、これまで進んでいなかった実態把握を急ぎ、必要とされる施策の検討につなげたい。

 今回の調査では発症時、仕事に就いていた人が4割近くに上っている。そのうち同じ職場で働き続けられた人はわずか5%未満で、8割が発症後、退職もしくは解雇に追い込まれている。4割の人が仕事の継続を望んでおり、発症によって望んでいた仕事を続けられなくなったことの無念さは計り知れない。
 発症で職を失うことで、経済的に困窮している実態も浮かんでいる。家族の意見では「生活やローンをどうするかがとても不安」などの声が上がっている。どのような支援が必要かとの問いには「家族手当などの介護者への現金支給」との回答が4割近くと最も多かった。切羽詰まった状況がうかがえ、経済的支援の必要性が分かる。
 近所の人に認知症を知らせていない家族が約5割に上り、4割近くが無理解や偏見を感じると答えている。社会に若年性認知症への正しい理解を広げる必要があろう。
 若年性認知症を疑って医療機関に行っても、認知症と判断されるまでに時間がかかっていることも分かった。初診で認知症と診断されなかった人が5割を超え、3カ所目の医療機関で初めて認知症と診断された人が約4割に上る。このため半数以上が初診から認知症と診断されるまで半年以上かかっている。早期に発見し、治療を始めるためにも医療機関同士の症例共有など、情報集約の取り組みを進めるべきだ。若い世代向けの介護サービスや相談窓口が不足しているとの指摘も相次いだ。家族の介護の負担は大きく、「グループホームを増やしてほしい。もう疲れました」といった声も寄せられた。追い詰められている家族の声なき叫びに耳を傾けたい。社会的支援を早急に進める必要があろう。
 認知症の人と家族の会・県支部準備会は交流会を開いている。家族間の連携も大切だ。県は今月中旬に施策推進会議を開いて今後の対策を検討するが、専門的治療の場や就労支援、相談窓口の拡充など多角的な施策を進めるべきだ。