安保法制与党協議 国民を欺く偽装工作だ


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 最初に法外な金額を吹っ掛けておいて、その後に大幅に割り引いて大きく譲歩したと見せ掛ける。そんな詐欺商法と見まがうほどの狡猾(こうかつ)な政治手法だ。

 政府は6日の安全保障法制に関する与党協議で、「他国の武力行使との一体化」の定義をめぐり、3日の協議で示した4条件を撤回する一方、原則として戦闘が実際に行われている現場(戦場)に限り、活動を禁じる新たな条件を提示した。
 元来、安倍政権の狙いは、戦争を禁じる平和憲法の制約を解釈改憲でなし崩しにすることだ。集団的自衛権の行使容認しかり、今回の自衛隊の海外での後方支援活動の拡大もしかりだ。
 そもそも憲法は、海外での武力行使を禁じており、歴代政権も「一体化」は違憲との立場を堅持してきた。自衛隊のイラク派遣などで「非戦闘地域」を設定したのも一体化回避のためだ。
 これに対し、政府は前回の与党協議で、「一体化」の定義を限定し、「現に戦闘行為を行っている他国部隊に対する支援」などの4条件を全て満たした場合に限り一体化とみなすとした。公明党は「戦闘行為以外、何でもできる」と反発していた。
 朝令暮改で提示された新条件も、「戦闘地域」の一定の範囲で後方支援が可能になり、まやかしにすぎないことは明白だ。大胆な譲歩案は、真の狙いを覆い隠すための“偽装工作”にほかならない。海外での武力行使を禁じた憲法9条を骨抜きにする突破口としたい思惑が透けており、断じて容認できない。
 一方、自公両党は、離島警備など武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」への対処について、事前の閣議決定で自衛隊出動の可否を首相に一任する運用見直しで合意した。政府は当初、自衛隊法改正による対応迅速化を狙ったが、表面上はこちらも譲歩した格好だ。しかし、自衛隊出動のハードルが下がる事実に変わりはなく、時の首相が恣意(しい)的に判断できる仕組みは危険極まりない。合意を直ちに撤回すべきだ。
 自衛隊の後方支援拡大もグレーゾーン対応も、偶発的な武力衝突を招きかねず、隊員が戦闘に巻き込まれる危険性が大きく増す。国民は戦争に真っすぐに突き進む安保政策の大転換を認めておらず、安倍政権の暴走は目に余る。国民本位の政治に即刻立ち返るべきだ。