介護休業 危機感をもって改善を


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 育児・介護休業法に基づく県内の介護休業取得率(推計)は1・4%で、全国平均3・2%、最も高い東京都の7・7%と比べ低水準だ。2012年総務省就業構造基本調査の試算から分かった。

 沖縄労働局は「小規模零細企業が多いため」と推測し、一部の介護問題の専門家は「収入が減るため休業に踏み切れない労働者が多いのではないか」と見る。
 国や企業、労働組合など関係機関は、まずは低い休業取得率の背景を含め、従業員の介護対応状況や将来見通しを丁寧に調査分析してほしい。
 国の介護休業制度では、企業の従業員は対象家族1人につき要介護状態が生じるたびに1回ずつ、通算93日まで介護休業を取得できると定める。事業主に申請して介護休業を取得した従業員には、休業開始時の給与(日額)の40%に相当する給付金が支給される。
 労働局によると、県内で13年度に介護休業を取得し、介護給付金を受給した人は203人。取得者は10年前から約3倍に増えた。
 就業構造基本調査によると、県内で介護をする労働者は約2万9千人と推定される。そのうち介護給付金の申請者と申請しなかった人を合わせた介護休業利用者は400人と見込まれる。国が介護と仕事の両立支援策を講じても、休業の取得者が少なければ宝の持ち腐れだ。現状は由々しき事態だ。
 介護をめぐっては、家族の介護や看護を理由に離職する「介護離職」が深刻な社会問題となっている。総務省の就業構造基本調査によると、2006年10月~07年9月の1年間で14万4800人が離職した。背景に、事業所の介護休業制度の不備、制度の周知不足があるのは間違いあるまい。
 県が13年度に実施した労働条件等実態調査によれば、回答した788事業所のうち依然、4割強は介護休業制度を設けていない。
 働き盛りの人が休業制度の不備や職場の無理解などのため介護離職に追い込まれるとすれば、大きな社会的損失だ。この悪循環は一刻も早く断ち切らねばならない。
 超高齢社会を迎え、高齢の夫婦、親子などが介護者・被介護者となる老々介護も年々増加している。
 介護休業制度の実効性を高めねば、介護離職も老々介護もますます深刻化するだろう。公的機関や企業は危機感を持って介護休業制度の改善・強化に努めてほしい。