自民農業改革案 自発的な農協改革を急げ


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 自民党は、農協改革を集中的に推進する期間を5年間とするなどの農業改革案を大筋で了承した。政府の規制改革会議が廃止を提言した全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする中央会制度については、「自律的な新制度に移行する」とし、組織が存続する余地を残した。有力な支持基盤である農業団体に配慮し、党側がブレーキをかけた格好だ。

 農家の高齢化や後継者不足、耕作放棄地の拡大など、国内農業が抱える課題は山積しており、農政改革が待ったなしであることに異論はない。農産物販売などの本業よりも信用事業の肥大化が指摘される農協の改革もしかりだろう。
 しかし、規制改革会議が提言した農業改革案に対し、JA全中は「グループの解体につながる」(万歳章会長)と強く反発している。農業生産法人への企業の出資制限の緩和や、JA全農の株式会社化なども提起しているためだ。JAグループが、市場の競争原理を振りかざす急進的な改革と受け止めるのも理解できる。
 安倍晋三首相は、成長戦略の一つに農業の抜本改革を位置付けており、農協改革にも強い意欲を示している。規制改革会議は与党の考えも参考に13日までに答申をまとめるが、自民党案がそのまま盛り込まれるかは不透明とされる。
 首相を中心に官邸が前のめりで、党側が慎重姿勢を示すという構図は、国論を二分している環太平洋連携協定(TPP)とうり二つだ。裏を返せば、安倍政権が進める改革が、日本農業に大きな影響を与えかねないとの懸念が強いことの表れでもある。
 農業改革は、食の安全・安心をはじめ、国土や環境の保全などとも密接に関連する。国民的な議論を欠いたまま、結論ありきで拙速に事を運ぶことは到底許されない。安倍政権は、国民への説明責任を果たし、理解を得る必要があることを銘記すべきだ。
 一方、JAグループも自発的な組織改革に迅速に取り組む必要がある。組織存続のための小手先の改革では、国民の理解は得られない。近年は、農業従事者が生産から加工や販売までを手掛ける6次産業化の取り組みなども各地で活発化しつつあり、支援体制や連携の強化も大きな課題となろう。農家本位の経営の原点に立ち返り、地域農業の復興に総力を挙げてもらいたい。