原子力規制委人事 これでは存在意義はない

 なりふり構わぬ原発推進の姿勢は異様だ。公正も中立もかなぐり捨てたありさまは看過できない。

 原子力規制委員会の委員に田中知東大大学院教授と石渡明東北大教授を充てる政府人事案が参院で可決され、正式承認された。与党が数の力で押し切った格好だ。
 田中氏は、原発推進派の学者らが集まる利権がらみの「原子力ムラ」の中心人物だ。その人物が原発再稼働の是非を論じるなど、戯画に等しい。日銀総裁や内閣法制局長官にみられるように、安倍政権は、人事権を駆使し、政権の望む結論を出す人を据えるというのが特徴だが、今回もまさにそうだ。自動販売機よろしく政権の望む通りの結論を自動的に出すというなら、原子力規制委員会など組織ごと不要だ。
 田中氏は原発メーカーの日立GEニュークリア・エナジーから計360万円、大間原発の建設を進める電源開発から計300万円の寄付を受領していた。東京電力の関連団体・東電記念財団が助成する研究事業の審査も担当し、計約300万円の報酬も受け取った。自身がトップを務める東大大学院の専攻には東電の寄付講座を設置し、計約9千万円の寄付を受けた。
 原発の当事者からこれほど金を受け取っておいて、原発再稼働審査の適任者であるとは、いったいどういう理屈か。理解に苦しむ。
 民主党政権が定めた原子力規制委の人選基準では、同一の原子力事業者から年50万円以上の報酬を受け取った者は認められない。石原伸晃環境相は「基準は民主党政権の政策だ」と適用しない考えを示した。それなら現政権でしっかりした基準を新たに定めるのが筋だ。しかし石原氏は「自民党政権は(新たに基準を)作らない」と述べた。驚くべき非論理性だ。
 地震や津波に関する審査が厳しいという理由で電力会社や自民党議員が批判していた島崎邦彦委員長代理が再任されず、石渡氏に代わることにも疑問を禁じ得ない。
 福島第一原発の事故の前、危険性を指摘する声があったのに、電力会社は無視した。原子力安全・保安院が原発推進の経済産業省の中にあるという矛盾が、チェックの行き届かなかった原因とされ、その反省から生まれたのが独立機関である原子力規制委だった。だから当事者からの独立、公正性は組織の生命線であるはずだ。それを放棄するならこの組織に存在意義はない。



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