集団的自衛権 「平和の党」の真価発揮を


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 「平和の党」としての公明党の真価が問われている。憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認問題をめぐり、安倍晋三首相から合意を迫られ、連立政権の亀裂を避けるため譲歩に傾いている。

 憲法は権力を縛るという立憲主義に基づいている。主権者の国民の合意形成や国会での徹底論議がないまま、一内閣の解釈だけで憲法の平和主義を空洞化させるのは、主権を国民から奪うという意味で「クーデター」に等しいのではないか。
 公明党は行使容認に前のめりな安倍首相に屈することなく、ブレーキ役を果たすべきだ。
 安倍内閣の憲法解釈の閣議決定原案は、1972年の政府見解を根拠にしている。その見解は「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置」を認めた上で、その措置は「必要最小限度の範囲にとどまるべきだ」と規定し、集団的自衛権の行使は憲法上許されないと結論付けている。
 これに対し安倍内閣の原案は、これまでの政府見解が認める「自衛のための必要最小限」の武力行使の範囲に、限定的な集団的自衛権の行使が含まれるとして、憲法解釈を変更している。従来の政府見解の前段の主張を引用して、結論部分を逆にしている。牽強付会(けんきょうふかい)そのものだ。
 公明党の立党の原点は「平和の希求」にある。沖縄問題に対し67年8月、「絶対平和主義をつらぬき、すべて国際的紛争の解決は武力によらず平和的外交手段によるべき」だと主張し、即時全面返還と核兵器の撤去を要求した。69年には在沖米軍基地を総点検し、基地経済から脱却させ平和な発展を図るため、強力な政策を実施するよう佐藤内閣に求めた。
 集団的自衛権の行使容認は同党が掲げた「絶対平和主義」と真っ向から対立する。立憲主義を否定し、日米軍事同盟を優先する安倍首相の主張は相いれないはずだ。
 安倍首相が重視する日米軍事同盟の論理は抑止論だ。しかし、抑止力を高めると相手国との緊張を高め、安全保障のジレンマに陥ってしまう。
 公明党が政権与党の座ににとどまるために安易な妥協をすれば、結党の理念を失ってしまう。今年11月に結党50周年を控える。今こそ結党の精神に基づいて、集団的自衛権行使容認の歯止め役として真価を発揮すべきだ。