女性の育児環境 「休む権利」の周知を急げ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄は全国で最も出生率(2012年、1・90)が高く、潜在的な社会の成長力は高いとされる。だが、女性が育児をしながら働く環境としては厳しい状況もある。

 13年の県の労働条件等実態調査では、改正育児・介護休業法で義務付けられた育児のための残業免除制度を設けていない事業所が38・3%あった。短時間勤務制度を導入していない事業所も22%あった。これは違法状態である。
 総務省の12年調査によると、働き盛りの25歳~44歳の県内女性(約8万500人)が働いている割合を示す「有業率」は62・5%(約3万3千人)で、全国平均より10・1ポイント高くなっている。
 つまり、働きながら子を育てる女性の割合が全国平均より高いにもかかわらず、それを支える社会的基盤は脆弱(ぜいじゃく)なのだ。経営者が法を順守せず、法律上の義務である育児休業制度を就業規則に反映せず、労働者の権利をないがしろにしていることになる。働きやすい職場をつくるため、企業側は法が定める義務を果たさねばならない。
 労働者側の理解不足も否めない。出産を機に辞めなくてもいいのに退職を選択し、経営者も当然視するケースも少なくない。こうした悪循環を断ち切らねばならない。
 県や市町村、沖縄労働局は、育児環境を整える制度の周知徹底を図り、違法状態にある企業への指導を強めて「休む権利」を保障する環境づくりを急ぐべきだ。
 こんなケースがある。中小企業の経理を任されていた正社員の女性は出産後に育児休暇を取らずに、子を育てることを選択した。だが、会社には早退を認めたり、残業を免除する制度がなかったため、子育てに行き詰まり、退職した。
 次に職を得た会社で第2子を出産した。短時間勤務の制度を活用しようとしたが、経営者と周囲の社員の冷たい視線にさらされ、女性は仕事を辞めざるを得なかった。
 能力のある女性が、育児のために仕事を辞めざるを得ない状況に追い込まれるのは社会の損失でもあろう。
 非正規労働者の場合は育児休業が取れないなどと思い込み、権利を放棄するケースも多い。
 県民所得が全国的にも低い水準にある中、育児をしながら働かねばならない女性が多い構造がある。子育てしやすい職場環境の整備は、沖縄社会全体の課題である。県民の意識も高めねばならない。