自衛権発動新3要件 平和と民主主義を葬るな


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 公明党の執行部が集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の変更を容認し、1972年の政府見解を引用した限定的な要件を解釈変更の閣議決定に盛り込む方向で自民党側と大筋で一致したという。

 自公両党の解釈改憲による安全保障政策の大転換は、断じて容認できない。戦争放棄をうたう日本国憲法の実質的な破壊行為だ。戦後民主主義と平和国家日本の危機と言っても過言ではなかろう。
 自民党の高村正彦副総裁は13日の与党協議で自衛権発動に関する従来の3要件を一部見直し、日本だけでなく他国への武力攻撃が起きた場合も発動を認める新たな3要件の「たたき台」を提示した。
 憲法9条で認められる「武力行使」は(1)わが国または他国への武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがある(2)ほかに適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使-などの場合に限られるとした。
 しかし、72年見解は「幸福追求の権利」が根底から覆される急迫、不正の事態を排除するため「必要最小限度の範囲」で自衛措置を認めたが、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と結論付けていた。法治国家にあるまじき見解のつまみ食い、姑息(こそく)な解釈変更で国民を欺いてはならない。
 新要件は1項目の「根底から覆される」との記述の後に「恐れ」の2文字を加えた。「恐れ」の判断を時の政権に委ねれば、米国に追従し集団的自衛権の行使範囲が拡大するのは目に見えている。
 過酷な沖縄戦、米軍支配を体験した沖縄からすれば、再びこの国が「戦争できる国」になることも、沖縄が戦争の「捨て石」や軍事標的になることも絶対認められない。
 集団的自衛権の行使に慎重姿勢だった公明党の方針転換は理解に苦しむ。公明党は「平和の党」としての矜持(きょうじ)を守り、国民不在の憲法破壊に加担してはならない。
 軍事的な消耗戦を選択するのではなく、経済、文化、市民交流などあらゆるソフトパワーを駆使し、戦争を回避することこそ政権、政党の最大の責任であるはずだ。
 戦争につながる解釈改憲は認められない。国民も「戦争できる国」を望んでいない。自公両党は冷静さを取り戻し、戦わずして平和を勝ち取る、持続可能な外交、安保政策こそ深く追求すべきだ。