改正電気事業法 改革は単なるポーズなのか


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2016年に電力小売りを全面自由化する改正電気事業法が成立した。企業向けに続き、大手電力会社が独占していた家庭向け市場も開放されることになる。

 ただ、電力10社の地域独占体制が崩れ、競争が起きて料金が値下げされると期待するのは早計だろう。長年閉鎖されていた市場が本当に自由化に進むのか、改革が単なる掛け声倒れにすぎないのか、われわれ国民は、政府や電力業界の今後の動向を注視する必要がある。
 全面自由化のさじ加減は、電力大手に委ねられている側面も否定できないからだ。新規参入事業者の主要な仕入れルートとして卸電力取引所が想定されるが、電力大手が十分な量の電気を取引所に出さなければ、新規参入者による事業の安定化は到底望めないだろう。
 電気事業連合会の八木誠会長(関西電力社長)は「積極的に取り組む」とするが、電力各社は原発停止で供給力が低下しており、実際の対応は不透明とされる。
 八木会長は、自由化による市場活性化について「原発再稼働で環境が整う」との認識も示している。しかし、原発が停止したままでは自由化しても値下げが見込めないという理屈は、値上げか、さもなくば再稼働かという脅しの論理と何ら変わらない。原発回帰を鮮明にする安倍政権の姿とも重なる。
 原発事故後、徹底した安全対策が迫られる原発のコスト優位性は、安全神話と同じく根底から崩れている。火力発電のコストが高いのは、原発にいつまでも見切りを付けず、旧来施設に頼っていることも要因の一つだ。最新鋭の火力発電は、燃料費の削減や二酸化炭素の排出抑制にもつながる。市場競争の前提として原発再稼働を主張するのは詭弁(きべん)でしかない。
 電力小売りの全面自由化は、安倍政権が3段階で推進する電力システム改革の第2弾と位置付けられる。ゴールとする第3弾が、18年から20年をめどに実施する発送電分離となる。
 全国の送配電網を道路のように広く開放する改革だが、政府は大手電力との資本関係を解消する所有権分離には踏み込まない見通しだ。安倍政権は改革姿勢を内外でPRするが、原子力ムラや電力ムラの温存を前提とする自由化は、国民や国際社会を欺くポーズにすぎないと銘記すべきだ。真の改革を志向するのならば、脱原発を打ち出すことこそがふさわしい。