高江訴訟上告棄却 罪深き最高裁の政府追従


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄の基地問題だけではなく、日本の民主主義全体にとってもあまりに罪深い司法判断だ。

 米軍北部訓練場の一部返還に伴う東村高江でのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の建設現場で反対運動を続ける住民に対し、沖縄防衛局が通行妨害禁止を求めた訴訟で、最高裁第2小法廷が住民側の上告を棄却した。「国の通路使用を物理的方法で妨害してはならない」と命じた住民敗訴の判決が確定した。
 国や大企業が住民運動などを萎縮させる狙いから起こす「スラップ訴訟(恫喝(どうかつ)訴訟)」としても、全国的に注目されていた裁判だ。
 住民側は、多くの住民が反対するヘリパッド建設に対する意思表示、抗議行動は憲法が保障する表現の自由に当たると主張して、訴権の乱用と不当性を訴えた。
 しかし、最高裁は上告棄却について、詳細な理由も示さないまま憲法違反などの上告事由に該当しないとした。上告受理申し立ての不受理決定も同様に、具体的な判断理由は示していない。
 あまりに空疎で機械的だ。「憲法の番人」「人権の砦(とりで)」としての使命を自ら放棄したに等しい。
 控訴審判決では、住民の「通行妨害」を「国が受忍すべき限度を超えている」としたが、具体的な基準などは示さなかった。最高裁もそれを踏襲したと言えよう。
 しかし、本来「受忍限度」は爆音訴訟などで住民側が使用する表現だ。立憲主義、国民主権の理念に照らせば、国家の「受忍限度」を持ち出して人権の訴えを退けるのは主客転倒も甚だしい。
 国に追従する司法の姿勢が社会に及ぼす影響は小さくない。お墨付きをもらったとして、国が米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の反対運動に対しても、同様の訴訟を起こす可能性も否定できない。
 基地問題だけでなく、個人の表現活動や住民運動なども抑え込み、人権や民主主義よりも国や大企業など強者の論理、施策を優先する風潮が強まりかねない。
 特定秘密保護法も年内施行の見込みだ。国民の言論や表現活動を萎縮させ民主主義を形骸化させる動きに、司法までもが追従、加担するならば、もはや暗黒社会というほかない。
 とはいえ、人権や民主主義を守る取り組みに終わりはない。敗訴が確定した住民らも「今まで通り」と運動継続を誓った。言論機関としてもあらためて肝に銘じたい。
英文へ→[Editorial]The Supreme Court’s decision on Takae lawsuit is unjustifiable