平和宣言 「沖縄の心」を反映させよ


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 これは県民が心から共有すべき不戦の誓いとは到底言い難い。沖縄全戦没者追悼式で仲井真弘多知事が発した平和宣言のことだ。

 平和宣言は例年(1)沖縄戦の悲惨さに触れ、不戦を誓う(2)米軍基地の集中による過重負担など沖縄の現状に言及(3)恒久平和の実現に向けた決意-を柱に構成されている。
 今年も従来の考え方を踏襲しているが、米軍普天間飛行場の返還問題では読み手によって解釈が異なってしまう曖昧さが際立った。
 知事は「普天間飛行場の機能を削減し、県外への移設をはじめとするあらゆる方策を講じて喫緊の課題を解決する」とし、そのために「普天間飛行場の5年以内の運用停止を求めている」と述べた。
 あたかも普天間そのものの県外移設を推進するかのように聞こえるが、疑問がある。「県外への移設」は基地自体ではなく「機能」にかかると読めるのだ。そうであれば、オスプレイの訓練の分散など機能の移転を意味する。
 その証拠に知事は当初、宣言から普天間の県外移設要求の文言を削除していた。与党から再考を促されて復活させたものの、昨年まで3年連続で盛り込んだ表現を避けようとしたことは隠しようのない事実だ。「県外移設」の意味が、単なる一部機能の移転であるなら、それは偽装、詐術に等しい。
 「5年内の運用停止」も米政府関係者は明確に否定しており、知事の説明には説得力がない。
 県民が沖縄戦から導き出した最大の教訓は「軍隊は住民を守らなかった」という事実である。
 教訓を直視しているのなら、知事の使命は戦争につながるあらゆる不穏な動きに反対することだと分かるはずだ。県民の命と人権、安全を守り、郷土の自然、文化を保全して沖縄の持続的発展に全身全霊を尽くすことであるはずだ。
 知事は民意が拒否する辺野古移設、解釈改憲による集団的自衛権行使容認などに異議を申し立てることこそが、戦没者の犠牲に報いる自らの責務だと銘記すべきだ。
 辺野古移設で協調する安倍政権の歓心を買うために、平和宣言を空疎なものにしてはならない。知事の個人的な政治信条によって宣言の内容が左右されてもならない。
 来年からは有識者による平和宣言起草委員会を設け、恒久平和を願う「沖縄の心」を名実ともに反映する内容に改めてほしい。